AI概要
【事案の概要】 本件は、「2,3-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロプロパン」等を含む組成物に関する特許(特許第6585232号)について、特許無効審判において特許を無効とした審決の取消しを求めた事案である。原告(特許権者)は、低地球温暖化係数の化合物であるHFO-1234yfと、HFC-254ebと、HFC-245cbとを含む組成物についての特許を有していた。被告が先行文献(甲4)に基づく新規性・進歩性欠如を理由に無効審判を請求し、審決の予告を受けた原告は、先行文献との重複を回避するため、「HCFC-225cbを1重量%以上で含有する組成物を除く」といういわゆる「除くクレーム」による訂正請求を行った。しかし、特許庁は、この訂正が新規事項の追加に該当し訂正要件に違反するとして訂正を認めず、特許を無効とする審決をした。 【争点】 いわゆる「除くクレーム」に数値範囲の限定を伴う訂正が、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正として許容されるか否か(特許法126条5項の訂正要件違反の有無)。具体的には、明細書等にHCFC-225cbに関する記載が一切ない場合に、同物質を1重量%以上含有する組成物を除外する訂正が新たな技術的事項を導入するものであるかが問題となった。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を認容し、審決を取り消した。まず、訂正が「明細書等に記載した事項の範囲内」であるかは、当業者が明細書等のすべての記載を総合して導かれる技術的事項(当初技術的事項)との関係で新たな技術的事項を導入しないかにより判断すべきであるとした。そのうえで、本件発明1の特許請求の範囲はいわゆるオープンクレームであり、HFO-1234yf等を含む限りそれ以外のいかなる物質をも含み得る組成物を意味するところ、本件訂正によりHCFC-225cbを1重量%以上含有する組成物を除外しても、明細書等に記載された技術的事項に何らの変更も生じさせないと判断した。また、除くクレームの訂正において先願発明と同一部分のみを除外することは法律上の要件ではなく、当初技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入しない限り、第三者に不測の損害を及ぼすとは考え難いとして、審決の訂正要件の解釈の誤りを認めた。