AI概要
【事案の概要】 被告人は、証券取引所に株券を上場していた株式会社Bの代表取締役副社長兼最高執行責任者を務めていた者である。被告人は、令和3年3月30日頃、その職務に関し、Bが属する企業集団の売上高予想値について、直近に公表していた予想値と比較して約14パーセント減少するという、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす差異が生じた旨の重要事実を知った。被告人は、この重要事実が公表される前に、知人女性2名に対し、Bの株券の売付けを推奨した(いわゆるインサイダー取引の推奨行為)。 具体的には、第1に、令和3年4月4日頃から同月15日頃までの間、Cに対し複数回にわたり面前などでB株の売付けを勧め、これを受けたCが同月15日及び16日に合計9200株を代金合計約1億4858万円で売り付けた。第2に、同月15日頃、Gに対し複数回にわたり面前などでB株の売付けを勧め、これを受けたGが同月16日に合計2000株を代金合計約3286万円で売り付けた。被推奨者2名は合計1万1200株を合計約1億8000万円で売却し、それぞれ約1800万円及び約450万円の損失を回避した。 本件は、金融商品取引法が禁止するインサイダー取引の推奨行為(取引推奨規制違反)に該当するものであり、上場会社の役員という内部情報に接する立場にある者が、未公表の重要事実を利用して知人に株式の売却を勧めたという、証券市場の公正性・健全性を直接損なう事案である。 【判旨(量刑)】 裁判所は、被告人を懲役1年6月、執行猶予3年に処した(求刑:懲役1年6月)。 量刑の理由として、裁判所はまず、本件が金融商品市場の公正性・健全性や、それらに対する投資家の信頼を害する悪質な犯行であると指摘した。被告人は、確実に損失の発生を回避させようと、予想値の公表前に被推奨者らに対して繰り返し売却を勧めており、計画的な犯行態様であった。また、交際関係にあり、自らが勧めて株式を取得させていた被推奨者らの損失を回避したいという身勝手な動機に基づく安易な犯行であり、上場会社の役員という責任ある立場の自覚を欠いていたと厳しく非難した。 他方、被告人に有利な事情として、事実を認めて反省の態度を示していること、二度と同様の行為はしないと述べていること、既に当該会社の役員を辞任していること、見るべき前科がないことを挙げ、これらの事情を総合考慮して執行猶予付きの判決が相当であると判断した。