AI概要
【事案の概要】 写真家である原告が、日本たばこ産業株式会社(被告)に対し、著作権(複製権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権)侵害に基づく損害賠償として合計8946万円の支払を求めた事案である。被告は平成17年2月から鹿児島県及び宮崎県において「さくら(SAKURA)」というブランドのたばこを販売し、その販売促進のために小冊子(本件冊子)及び販促用写真を作成した。本件冊子には、原告が撮り下ろした写真2点と原告の写真集「幻視」に収録された写真3点の合計5点が見開き全面に掲載された。また、販促用写真は、原告の写真2点をたばこ自動販売機のステッカーや陳列用ケースの形状に合わせてトリミングして作成されたものであった。原告は、デザイン会社(NDC)に対し、平成17年2月1日から同年4月30日までの3か月間に限り写真の利用を許諾したと主張し、許諾期間を超えた本件冊子の頒布が複製権侵害に、無断でのトリミングが同一性保持権侵害にそれぞれ当たると主張した。 【争点】 主な争点は、(1)許諾期間を超えた本件冊子の頒布による複製権侵害の有無、(2)写真のトリミングによる同一性保持権侵害の有無、(3)利用許諾の内容及び期間、(4)損害額、(5)消滅時効の成否であった。被告は、本件冊子の頒布はテスト販売の認知獲得期間である平成17年3月頃までに終了しており許諾期間内であると反論し、また、トリミングは販促ツールの規格に合わせた最低限のものであり原告も認容していたと主張した。さらに、仮に不法行為が成立するとしても消滅時効が完成していると主張した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず複製権侵害について、本件冊子は本件たばこの認知獲得のために作成・頒布されたものであり、平成17年2月1日に頒布が開始され同年3月頃まで継続されたと認められるが、同年4月以降は顧客のリピート・定着促進の期間と位置付けられていたことから、新たに頒布されたとは認められないとして、原告が主張する同年5月以降の頒布を裏付ける的確な証拠がないと判断した。次に同一性保持権侵害について、仮に損害賠償請求権が成立するとしても、原告は平成17年2月頃に広告代理店からデザイン案の交付を受けており、写真の差替えが行われたハンドブックも同時期に交付を受けたと推認されることから、その時点で損害及び加害者を知ったといえ、3年の消滅時効期間が経過していると認定した。原告は令和2年9月に友人から写真を見せられて初めてトリミングの事実を知ったと主張したが、約15年前の写真について記憶を喚起したとする陳述書の内容は信用し難いとして排斥された。