損害賠償等請求事件(本訴)、損害賠償請求(反訴)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 イラストレーターである原告が、漫画家兼イラストレーターである被告に対し、被告が自身のブログ及びツイッター(現X)において、原告が被告のイラストをトレースして作品を制作しているとの趣旨の投稿を繰り返したことが名誉毀損又は不正競争防止法2条1項21号の不正競争行為に該当するとして、損害賠償、投稿の削除及び謝罪広告の掲載を求めた事案(本訴)である。原告と被告はいずれも乙女ゲームのキャラクターデザインを手掛けるイラストレーターであり、被告は原告の作品が自身のイラストをトレースしたものであると考え、検証画像を作成した上で、ブログ記事やツイートにおいてイニシャル等を示しつつ繰り返し言及していた。被告は反訴として、原告によるトレース行為を理由とする損害賠償等を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件各投稿による名誉毀損の成否、(2)違法性阻却事由又は責任阻却事由(摘示事実の真実性・相当性)の有無、(3)不正競争行為該当性、(4)原告の損害額、(5)投稿削除及び謝罪広告の必要性、(6)反訴における不法行為(原告によるトレース)の成否である。被告は、イラストの線の重なりに関する検証画像、原告の絵柄の急変、実演会での画力不足を根拠にトレースの事実は真実であると主張した。 【判旨】 裁判所は、本件各投稿について名誉毀損の成立を認め、違法性阻却事由を否定した。まず、本件各投稿は、断片的な情報を積み重ねることで原告が被告イラストをトレースしたとの事実を摘示するものであり、乙女ゲームに関心を持つ読者であれば対象者が原告であると同定可能であると判断した。次に、被告が主張するトレースの真実性について、(1)原告イラストの一部は被告イラストよりも先に成立しており、原告が被告イラストを入手する可能性がなかったにもかかわらず線の重なりが認められることから、線の重なりのみではトレースを推認できないこと、(2)絵柄の急変はトレースに直ちに結びつかないこと、(3)実演会での画力不足もトレースの裏付けとはならないことを認定し、真実性の立証は不十分であるとした。また、被告は投稿前にF社弁護士からタイムスタンプに基づく反論を受けていたのに再検討を怠っており、真実と信じた相当の理由も認められないとした。損害額については、逸失利益86万円、慰謝料200万円、弁護士費用28万円の合計314万円を認容し、投稿の削除を命じた。謝罪広告については、原告の社会的評価が相当程度回復していることから必要性を否定した。反訴についても、トレースの事実は認められないとして棄却した。