宅地建物取引業法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、宅地建物取引業の免許を受けないで、業として建物賃貸借契約の媒介を行い、宅地建物取引業法に違反したとして起訴された刑事事件である。被告人は当初、個人として無免許で宅地建物取引業を営んだとする訴因で起訴されたが、第1審の公判過程において検察官が訴因変更を請求した。変更の内容は、「被告人は、免許を受けないで」という部分を「被告人は、株式会社Aの代表取締役であるが、同会社の業務に関し、免許を受けないで」に改めるもので、行為主体を個人から法人代表者に変更するものであった。第1審裁判所はこの訴因変更を許可し、変更後の訴因に基づいて有罪を認定した。被告人側は訴因変更の適法性(公訴事実の同一性の有無)を争い、控訴審でも排斥されたため、判例違反や法令違反を理由に最高裁に上告した。 【争点】 本件の中心的争点は、訴因変更前の「個人として無免許で宅地建物取引業を営んだ」という訴因と、変更後の「法人の代表取締役として法人の業務に関し無免許で宅地建物取引業を営んだ」という訴因との間に、公訴事実の同一性が認められるかという点である。行為主体の法的性質が個人から法人代表者へ変更された場合でも、刑訴法312条1項の訴因変更が許容される範囲内にあるかが問われた。弁護人は仙台高裁昭和40年判決を引用して判例違反も主張したが、原判決がその論点について法律判断を示していないため、上告理由としての前提を欠くとされた。 【判旨(量刑)】 最高裁第一小法廷は、裁判官全員一致の意見で上告を棄却する決定をした。職権で公訴事実の同一性について判断し、両訴因はいずれも被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する行為を内容とする点で事実が共通しており、かつ両立しない関係にあることから、基本的事実関係において同一であると認定した。したがって訴因変更を許可した第1審の訴訟手続に法令違反はなく、第1審判決を維持した原判決は正当であるとして、上告を棄却した。本決定は、無免許営業の行為主体が個人か法人代表者かという訴因の変更について、公訴事実の同一性を肯定した判例として意義を有する。