AI概要
【事案の概要】 被告人が、実子A及びBと共謀の上、平成23年3月5日、東京都内のマンション一室において、精神障害を有していた被告人の夫V(当時77歳)を手段不詳により殺害したとされる事案の控訴審である。Vは入院先から退院した当日、わずか7時間以内に死亡しており、Bが偽造した死亡診断書と一体となった死亡届を被告人が届け出ていた。原審は殺人の共謀共同正犯を認定し、懲役11年を言い渡した。弁護人は、事実誤認及び法令適用の誤りを主張して控訴した。 【争点】 第一の争点は、被告人ら3名の間の殺人の共謀の有無及び当該共謀に基づくVの殺害の認定である。弁護人は、被告人とAの間のメールは口汚く愚痴を言い合う仮想空間のようなもので、被告人は殺害計画を具体的に認識していなかったと主張した。また、Aが計画の中止をBに了承させていたとの証言を根拠に、Bが独断で殺害した可能性も主張した。第二の争点は、被告人が共同正犯か幇助犯かという法令適用の問題であり、弁護人は被告人には正犯意思がなく幇助の故意にとどまると主張した。 【判旨(量刑)】 大阪高裁は控訴を棄却した。共謀の認定について、平成23年2月下旬以降、被告人がAとの間で現場の賃借、死亡診断書・死亡届の手続、虚偽の退院手段等について的確に応答し、現場の下見や鍵の受取り、点滴設備の確認、実際のVの退院・搬送を計画通りに実践していた事実を重視し、原判決の認定に不合理な点はないとした。Bの独断殺害の可能性についても、犯行が事前計画どおりに進行し、被告人がVをA・Bに引き渡した以上、共謀関係の解消は認められないとした。法令適用の点については、被告人にしかできない退院手続等の役割を果たしていたこと、殺害計画の核心部分を事前に知っていたこと、被告人自身がVの死を強く望んでいたことから、正犯意思は明らかであり、共同正犯の認定及び刑法60条の適用に誤りはないと判断した。原審の懲役11年が維持された。