AI概要
【事案の概要】 企業経営コンサルティング会社Aの代表取締役である被告人が、株式会社B代表取締役Cから融資金名目で現金3000万円をだまし取ったとして詐欺罪で起訴された事案。検察官の主位的訴因は、被告人がA社のD社に対する架空の売掛債権を担保に見せかけ、内容虚偽の請求書等をCに呈示して融資を申し込み3000万円の交付を受けたというもの。予備的訴因は、Cの顧問弁護士Eに対し同様の虚偽請求書等をファックス送信し、E及びCを誤信させて3000万円の交付を受けたというものである。本件は差戻前第一審で有罪とされたが、控訴審でEとCのLINEトーク履歴等から両名が通謀して証拠を捏造し証人尋問前に口裏合わせをしていたことが判明し、原判決が破棄差戻しされた経緯がある。 【争点】 被告人が内容虚偽の請求書等を虚偽と認識しながらファックス送信したか(欺罔行為の有無)が中心的争点となった。検察官は、送信から被告人がEにメッセージを送るまで約11分しかないこと、送信文書に被告人以外が送信した形跡がないこと、送信前後のやり取りで被告人がD社債権の存在を前提とするメッセージを送信していたこと等から、被告人による送信行為と虚偽性の認識が推認されると主張した。 【判旨(無罪)】 裁判所は、検察官が主張する各間接事実の推認力にはいずれも限界があるとした。約11分の時間間隔は第三者が送信し被告人が連絡を受けた可能性と矛盾しない。送信文書から被告人以外の送信の形跡がないことは、同時に被告人が送信した確たる形跡もないとした。さらに、A社とK社は人的にも業務上も密接に重なり合い、被告人が両社間の財産の分別を厳密に捉えていなかった可能性が否定できないこと、弁護人が指摘するK社の経理担当Jが被告人の指示を受けつつ独自の判断で虚偽請求書を作成・送信した合理的疑いも否定できないことを認定した。差戻後の審理でEは免責決定の下で証言したが、前一審での供述からの変遷について合理的説明がなく、不自然な供述が続いているとして信用性を否定した。以上から、被告人が虚偽請求書等を虚偽と認識しながら送信した又は送信させたとは認められず、犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した。