特許権侵害行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「ヤーン色配置システム」等とする3件の特許権を有する米国法人の原告(カード-モンローコーポレイション)が、各種織物機械の製造を目的とする被告(道下鉄工株式会社)に対し、被告が製造・輸出するタフティングマシン(マットやカーペットの基布に毛房を植え付ける機械)が原告の特許権を侵害すると主張して提起した訴訟である。原告は、特許法100条1項及び2項に基づく被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄、並びに民法709条に基づく損害賠償金10億円の一部である1億円及び遅延損害金の支払を求めた。原告の3件の特許はいずれもタフティングマシンにおけるヤーン(糸)の色配置やステッチ分布の制御に関する発明であり、バッキング材料(基布)に複数の色のヤーンを配置して模様を形成する際に、実際に打ち込むステッチの密度を模様として見えるステッチの密度よりも高くすることで、自由に流れる色模様を実現するシステムに関するものであった。被告は平成27年6月頃から被告製品を製造し、中国又はタイに所在する顧客に向けて輸出していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件各発明の技術的範囲に属するか、(2)本件各特許に無効理由(明確性要件違反、新規性欠如、進歩性欠如)があるか、(3)損害額、(4)差止め及び廃棄の必要性であった。特に、先行技術である乙4公報(特表2006-524753号、タフト作製機械のための糸送りシステムに関する発明)に基づく進歩性欠如の有無が中心的な争点となった。 【判旨】 裁判所は、まず被告製品が本件各発明の技術的範囲に属すると認定した。具体的には、構成要件の「係合する位置」について、ゲージ部品と針が物理的に接触する位置にあることを要求するものではなく、ヤーンのループを受け取ることが可能な程度に相互に近接した位置にあることを特定するものと解釈し、充足を認めた。しかし、無効理由の検討において、本件各発明はいずれも乙4発明から容易に発明できたと判断した。裁判所は、乙4発明がバッキング材料の給送速度を任意に変更し得る発明であること、複数の色の糸を使用する場合にハイロー制御により模様として見えるタフトより実際に打ち込むタフトが多くなることは技術常識であることを指摘し、本件各発明は乙4発明に「所望の織物ステッチレート」や「有効スティッチ速度」等の概念を導入して制御方法を説明したにすぎないと認定した。原告が主張する顕著な効果も認められないとして、本件各特許はいずれも特許無効審判により無効にされるべきものと認め、原告の請求を全部棄却した(特許法104条の3第1項)。