介護給付費却下処分取消等請求事件(国賠)
判決データ
- 事件番号
- 令和4行ウ48
- 事件名
- 介護給付費却下処分取消等請求事件(国賠)
- 裁判所
- 千葉地方裁判所
- 裁判年月日
- 2023年10月31日
AI概要
【事案の概要】 筋萎縮性側索硬化症(ALS)にり患し、身体障害者等級1級・要介護5・支援区分6の認定を受ける原告が、松戸市に対し、障害者総合支援法に基づく重度訪問介護の支給量を月581.5時間から月744時間(24時間介護)に変更するよう申請したところ、市が「必要があると認めるとき」に該当しないとして却下決定をした事案である。原告はALSの進行により寝たきり状態で、バイパップによる終日非侵襲的陽圧換気療法を受けており、いつでも呼吸不全で急変し得る状態にあるため、モニターの警告音に即座に対応して吸痰を行える体制が常時必要であった。原告は妻及び子と同居しており、妻は原告の介護に加え、子の養育・家事全般・アルバイト就労を一手に担っていた。原告は、却下決定の取消し、月744時間への変更決定の義務付け、及び国家賠償法に基づく損害賠償(慰謝料100万円、介護費用自己負担分3万8000円)を求めて提訴した。 【争点】 (1) 本件却下決定の取消しを求める訴えの利益の有無(変更決定の適用期間経過後も訴えの利益があるか)、(2) 本件却下決定に係る裁量権の逸脱・濫用の有無(月581.5時間の支給量で足りるか、妻の介護負担を適切に考慮したか)、(3) 被告市長の職務上の注意義務違反の存否(国家賠償法上の違法性)、(4) 損害の発生及びその額。 【判旨】 裁判所は、訴えの利益について、却下決定が取り消されれば原告は適用期間内の増量分の介護給付費の支給を受けられる法的地位にあるとして、適用期間経過後も法律上の利益があると判断した。裁量権の逸脱・濫用については、原告がALSの進行により常時吸痰可能な体制を必要とする重篤な状態にあること、妻が介護負担に起因して椎間板ヘルニア・適応障害・抑うつ状態・緊張型頭痛・IgA腎症等を患い心身ともに健常でない状態にあること、妻が子の育児・家事・就労を一手に担い家庭の負担が集中していることを認定し、妻単独での介護時間帯に介護疲れ等により吸痰対応ができず原告の生命が危険にさらされる可能性が高いと判断した。市の決定は妻の心身の状況や介護負担を十分に顧慮せず、公的サービス時間帯に妻が一切の負担を負っていないという「皮相的な見方」を前提としたものであり、考慮すべき事項を考慮しないことにより裁量権を逸脱・濫用したものとして違法であるとした。相当な支給量については、基本的に月744時間が認められるべきとしつつ、身体介護27時間・訪問診察2.5時間・訪問看護31時間を控除し、月683.5時間を下回らない時間とする変更決定を義務付けた。他方、国家賠償請求については、市が審査会の意見等を踏まえて決定しており、市長に職務上通常尽くすべき注意義務違反があるとまでは認められないとして棄却した。