AI概要
【事案の概要】 令和元年7月施行の第25回参議院議員通常選挙に関する公職選挙法違反(被買収)の事案である。被告人は広島市議会議員(当時7期目)で、約8000人規模の後援会を有し、自民党広島県連の副幹事長を務めていた。同選挙では、広島選挙区(定員2名)にAが自民党公認候補として立候補を表明したが、県連は既に現職のJのみを支援する方針を決定しており、A陣営は県連の支援なしに活動せざるを得ない状況にあった。Aの配偶者で衆議院議員のGは、Aの当選に向けて積極的に活動しており、平成31年3月31日、被告人の市議選の選挙事務所を陣中見舞と称して訪れ、被告人に現金30万円を供与した。被告人はこれを受領したが費消せず保管し、翌年検察官に任意提出した。 【争点】 ①Gによる現金供与に買収の趣旨があったか、②被告人がその趣旨を認識していたか、③被告人がAの選挙運動者に該当するか、④本件公訴提起が公訴権濫用に当たるかが争われた。弁護人は、政治家間の陣中見舞として通常の金銭授受であり、買収の趣旨の認定は具体的な選挙支援の明示的依頼がある場合に限るべきと主張した。また、検察が不起訴と引き換えに虚偽自白調書を得る違法な司法取引を行い、不起訴約束を反故にして起訴したもので公訴権の濫用であるとも主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、Gが従前一切現金供与をしていなかったにもかかわらず、Aの立候補表明直後の時期に集票力・影響力のある被告人に30万円を供与したことから買収の趣旨を推認し、7期連続当選の経験を持つ被告人がその趣旨を認識しなかったとは考えられないと判断した。公訴権濫用の主張についても、不起訴の約束はなく期待にとどまること、自白部分を除いても有罪を得る十分な証拠があったことから排斥した。量刑としては、求刑どおり罰金30万円及び没収を言い渡した。