詐欺幇助被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 IP電話回線貸出販売業等を営むA合同会社の経営者であった被告人が、詐欺幇助罪の共同正犯に問われた事案の控訴審である。被告人は、氏名不詳者らが特殊詐欺に使用することを知りながら、従業員らと共謀の上、令和2年1月から10月にかけて、氏名不詳者らに対しIP電話回線利用サービスを提供した。氏名不詳者らは、このIP電話回線を利用して広島市内の男性、高知市内の女性、福山市内の男性に対し、運用利益の配当や未納料金の支払いなどの名目で嘘を言い、合計約964万円を騙し取った。被告人はこれら3件の詐欺の実行を容易にしたとして、詐欺幇助罪の共同正犯で起訴され、原審の広島地裁で有罪判決を受けた。弁護人は事実誤認を主張して控訴した。 【争点】 主な争点は、①被告人のIP電話回線提供行為が詐欺の幇助行為に該当するか、②被告人に詐欺幇助の故意(未必の故意)が認められるかの2点である。弁護人は、回線再販業は電気事業法が予定する適法な事業であり、被告人らは大手キャリアと同一の立場にあるため客観的に幇助行為とみることはできないと主張した。また、捜査機関の依頼には直ちに応じて強制解約していたこと等から、詐欺に使用されることを認容していたとはいえないとも主張した。 【判旨(量刑)】 広島高裁は控訴を棄却した。幇助行為の該当性について、被告人らは平成28年以降数年にわたり全国の警察から多数の捜査関係事項照会や捜索を受け、提供回線が特殊詐欺に多数利用されている事実を認識していたにもかかわらず、あえて契約書を作成せず本人確認も行わない形でサービス提供を続け、捜査対応のために虚偽名義の契約書を事後的に作成することまで繰り返していた点を重視し、これは価値中立的な行為ではなく幇助行為と評価すべきとした。故意についても、根本的な対策を何らとらず実際の契約者を特定困難な形態での回線提供を続けていたことから、少なくとも犯罪利用を認容していたことは明らかであり、捜査機関への協力や通常の使用料しか得ていなかったことは故意の認定を左右しないと判断した。