詐欺幇助被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 IP電話回線貸出販売業等を営むA合同会社の従業員であった被告人が、同社の経営者らと共謀の上、氏名不詳者らに対しIP電話回線利用サービスを提供し、特殊詐欺の実行を容易にしたとして、詐欺幇助罪の共同正犯に問われた事案の控訴審である。原審(広島地裁)は、A社が数年にわたり全国の警察から捜査関係事項照会や捜索を受け、提供した回線が特殊詐欺を含む犯罪に多数利用されていることを認識しながら、あえて契約書を作成せず本人確認も行わない形でサービス提供を続けていたと認定し、被告人を有罪とした。被害は3件で合計約963万円に上る。被告人側が事実誤認を主張して控訴した。 【争点】 本件の中心的争点は、IP電話回線の再販業務が詐欺幇助行為に該当するか、及び被告人に詐欺幇助の故意(未必の故意)が認められるかである。弁護人は、①A社の事業は電気事業法が予定する回線再販業であり、大手キャリアと同一の立場であるから客観的に幇助行為とはいえない、②捜査機関の依頼に直ちに応じて強制解約するなど被害防止に努めており故意はない、③犯罪利用率の高さで有罪無罪を決することは罪刑法定主義に反する、と主張した。 【判旨(量刑)】 広島高裁は控訴を棄却した。まず幇助行為の成否について、原判決はIP電話回線の再販業務一般を幇助としたのではなく、被告人らが意図的に契約者の特定を困難にする形態でサービスを提供していた事実を認定し幇助と評価したものであり、法を遵守する一般の再販業者と同列には論じられないとした。故意については、被告人らが多数の捜査関係事項照会や詐欺事件による捜索を受けながらも本人確認の徹底等の根本的対策を講じず回線提供を続けていた以上、少なくとも犯罪利用を認容していたことは明らかであり、捜査協力や通常料金での提供といった事情はこの認定を左右しないとした。犯罪利用割合に関する主張についても、原判決は割合のみで有罪無罪を判断したものではなく、具体的裏付け事実として指摘したにすぎないと退けた。