AI概要
【事案の概要】 本件は、被告人Aが普通貨物自動車を、被告人Bが普通乗用自動車をそれぞれ運転し、札幌市内の交通整理の行われていない交差点(本件交差点)に進入した際、出会い頭に衝突し、その衝撃で被告人A車両が歩道上に逸走して歩行者をれき過し死亡させたという過失運転致死の事案である。 本件交差点は、幅員各5.1メートルの道路が交わり、西側角に高さ約2.4メートルの植え込みがあるため、双方とも交差道路の見通しが困難であった。被告人Aは石狩市方面から国道方面へ、被告人Bはその交差道路を直進しようとしていた。被告人両名にはいずれも交差点手前で徐行し交差道路の安全を確認すべき注意義務があったが、被告人Aは自己が優先道路を走行していると思い込み、被告人Bは交差道路に一時停止標識があると思い込み、双方とも徐行せず時速約30キロメートルで交差点に進入した。衝突後、被告人Aはブレーキペダルを踏もうとしたが誤って床を踏んだため車両は停止せず、歩道上を歩行中の被害者(当時78歳)に衝突し、さらにれき過した。被害者は多発外傷により搬送先の病院で死亡した。 【争点】 被告人Bの弁護人は、被害者死亡の直接の原因は衝突後の被告人Aのハンドル・ブレーキ操作の誤りにあるとして、被告人Bの過失行為と被害者の死亡との間に因果関係はなく、被告人Bは無罪であると主張した。具体的には、ドライブレコーダー映像上、被告人A車両は歩道に乗り上げた時点で徐行程度まで減速していたのにれき過時には加速しており、被告人Aが誤ってアクセルペダルを踏んだと主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、まずドライブレコーダー映像の検討から、衝突後の被告人A車両の速度に概ね変化はなく、アクセルペダルを踏まなくても転倒した被害者をれき過することは十分可能であったとして、アクセル踏み込みの主張を退けた。因果関係については、過失行為に内在する危険が実現して結果が発生したかという観点から判断すべきとし、交差点で車両同士が衝突すれば衝突車両が逸走して周囲の歩行者に衝突するという危険は過失行為に内在するものであるから、被告人Bの過失行為と被害者の死亡との間に因果関係が認められると判示した。 量刑については、被告人両名がいずれも乏しい根拠に基づき徐行義務がないと考え交差道路の安全確認を怠った点で、基本的な注意義務違反の程度は大きいとした。一方、衝突かられき過まではわずか数秒で被告人Aが狼狽していた状況を踏まえ、不適切なハンドル・ブレーキ操作は被告人Bの量刑上有利に考慮できないとした。被害者の死亡という結果の重大性や遺族の厳しい処罰感情を考慮しつつも、対人無制限の保険による損害賠償の見込み、被告人両名が過失を認め今後運転しない意向を示していること等を踏まえ、被告人両名をそれぞれ禁錮2年6月・執行猶予3年に処した(求刑どおり)。