金融商品取引法違反行為禁止等命令申立事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、金融庁長官から権限の委任を受けた証券取引等監視委員会(申立人)が、金融商品取引法(金商法)192条1項に基づき、被申立人ら(フィリピン所在の外国法人S DIVISION HOLDINGS INC.(SDH社)、株式会社STEP CAPITAL MANAGEMENT(キャピタル社)及びこれらの実質的経営者である被申立人甲)に対し、金商法違反行為の禁止・停止を求めた事案である。 被申立人甲は、平成25年頃からフィリピンの不動産事業や金融業に関与し、複数の関連法人を設立してSDH社グループを形成した。被申立人キャピタル社は平成28年10月から社債(キャピタル社債)の発行を開始し、被申立人SDH社は令和3年6月以降、ポートフォリオ社債等のSDH社証券を発行して資金調達を行った。年利6%〜60%、1口10万円〜1000万円という条件で、延べ4385名の投資家から合計200億円超の社債を取得させたが、いずれの被申立人も金商法29条所定の金融商品取引業者としての登録を受けておらず、有価証券届出書の提出も行っていなかった。 【争点】 被申立人らが金商法に違反する行為を行い又は行おうとする者に該当するか、及び、禁止・停止命令を発する緊急の必要性があり公益及び投資者保護のため必要かつ適当であるか。被申立人らは、金商法の規制を誤解していたにすぎず、既に違反行為を中止し社債の解約・返金手続を進めているため、禁止命令の緊急の必要性は失われていると主張した。 【判旨】 裁判所は、申立てをいずれも認容し、被申立人らに対する金商法違反行為の禁止・停止を命じた。まず、SDH社債及びキャピタル社債はいずれも金商法上の有価証券に該当し、50名以上への勧誘かつ発行価額総額1億円以上であることから「有価証券の募集」に当たると認定した。被申立人らは有価証券届出書を提出せずにこれらを募集・取得させたため、金商法4条1項及び15条1項に違反する。また、被申立人キャピタル社及び被申立人甲は無登録で第一種金融商品取引業を行った者に当たり、金商法29条にも違反する。 さらに、被申立人甲は金商法への抵触を認識しながら、社債名称・利率・回号の変更や別法人名での発行など規制潜脱の手法を駆使して約6年以上にわたり違反行為を反復継続し、立入調査後もなお半年間SDH社債の発行を続けて発行残高を46億円以上増加させていたことから、金商法遵守意識の低さと資金調達への意欲の高さは顕著であり、今後も同種の違反行為を行うおそれが高いと判断した。被申立人らの誤解の主張や社債解約手続中である旨の主張は、返還未了元本が合計230億円以上に達する状況等に照らし、違反行為の再発可能性を否定するものではないとして退けられた。禁止命令は解約・償還手続を禁じるものではなく投資家を害するものでもないとして、緊急の必要性及び公益・投資者保護のための必要性・相当性を認めた。