AI概要
【事案の概要】 原告Kepler株式会社及び原告国立大学法人東北大学は、発明の名称を「表示装置」とする特許出願(特願2019-208203号)について拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を請求するとともに特許請求の範囲を補正したが、特許庁は補正を却下し「本件審判の請求は、成り立たない」との審決をした。本件は、原告らが同審決の取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件補正発明は、表示パネルと光センサを備え、印刷表示媒体(紙)の外光に対する拡散反射光を再現するために、画素の輝度を「拡散反射率×照度/π」の計算式に基づき設定し、画素の配光分布をランベルトの余弦法則に基づく均等拡散分布とすることを特徴とする表示装置に関するものである。審決は、本件補正発明は引用発明及び技術常識1~3に基づいて当業者が容易に発明できたものであり進歩性を欠くと判断した。 【争点】 (1) 有機発光表示装置がランベルト分布に近い発光分布を持つとの技術常識1の認定の当否(相違点1の容易想到性) (2) 引用発明における照度値と放射輝度の比例関係及び比例定数ρ/πの自明性(相違点2の容易想到性) (3) 引用文献3から技術常識3を認定できるか (4) 技術常識2の表示装置制御への適用可能性 (5) 引用発明に照度輝度比例構成を採用することの阻害要因の有無 (6) 本件補正発明が顕著な効果を奏するか 【判旨】 知財高裁は、原告らの請求をいずれも棄却した。 争点(1)について、ボトムエミッション構造における開口率の小ささは特定製品の個別事情にすぎず、TFTの存在が配光分布に与える影響は極めて限られていると認定した。トップエミッション構造のマイクロキャビティ効果についても、マイクロキャビティが必須の構成ではなく、紙の光学特性を模倣する引用発明の目的に照らせばマイクロキャビティ構造を採用することは考えにくいとして、技術常識1の認定に誤りはないと判断した。 争点(2)について、審決は引用発明そのものが比例関係を備えると認定したのではなく、技術常識3に基づく設計変更の際に技術常識2も踏まえて比例定数がρ/πに相当することは自明としたにすぎないとして、原告らの主張は審決の判断構造を正解しないものと退けた。 争点(3)について、引用文献3の図8における紙の照度と輝度の比例関係は発明の課題・解決手段とは無関係に当業者に明らかであり、技術常識3の認定は正当とした。 争点(4)について、引用文献7・8の完全拡散面と輝度に関する記述は一般的な光学知識であり、表示装置の技術分野にも適用できるとした。 争点(5)について、最低輝度の維持制御技術は「一実施形態」にすぎず必須の構成ではなく、照度がしきい値を下回るときにのみ発動されるものであって照度輝度比例構成と両立・並存するものであるから、阻害要因にはならないと判断した。 争点(6)について、原告ら主張の効果は引用文献1の記載事項及び技術常識から当業者が十分に予測可能であり、顕著性は認められないとした。