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【事案の概要】 本件は、熱伝導性ワイヤ編物を用いた熱交換装置に関する特許出願(国際出願日:平成28年9月30日)について、特許庁が進歩性欠如(特許法29条2項)を理由に拒絶査定不服審判の請求は成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。原告の本願発明は、直径0.01mm〜2mmの熱伝導性ワイヤで編まれた熱伝導性編物に、鋳造又は溶接により形成された金属枠を設け、放熱又は吸熱を必要とするデバイスを溶接等により金属枠に接続することで、最短距離で最大の放熱面に熱を迅速に伝導する熱交換装置である。特許庁は、本願発明は引用発明(LED光源の自動二輪車交換用ヘッドライトバルブユニットに関する発明)及び周知技術に基づき当業者が容易に発明できたものと判断した。 【争点】 (1) 相違点の認定の誤りの有無(構成B〜Fに関する相違点の認定) (2) 相違点の容易想到性の判断の誤りの有無(相違点1:金属枠の選択、相違点2:溶接等による接続方法) (3) 予測できない顕著な効果の有無 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 相違点の認定について、裁判所は、本願発明の「金属枠」とは熱伝導性編物を一定の形状構造に保持し熱を伝導する機能を有する金属製の部材を意味すると解し、引用発明の「固定部材11」も可撓導体をリボン形状に保持する機能及び熱伝導機能を有するから、両者は「形状保持部材(枠)」である点で共通し、材質や形成方法が特定されていない点で相違するとの審決の認定に誤りはないと判断した。構成Cについても、「放熱又は吸熱を必要とするデバイス」は中間部材を介した接続構造を排除するものではないとし、構成D・Fは構成A〜Cを備えることで実現される作用を特定したにすぎないとした。構成Eの「対流により放熱又は吸熱」も熱伝導性編物を用いることでおのずと備わる構成であるとした。 容易想到性について、裁判所は、固定部材の材料として熱伝導性に優れた金属を選択することは当業者の通常の材料選択であり、金属部材を鋳造又は溶接により形成することも通常行われることであるから、相違点1は容易想到であると判断した。相違点2についても、放熱デバイスとヒートシンクの接続に溶接等を用いることは周知技術であるとした。顕著な効果の主張についても、本願明細書には大量の実験データや温度上昇圧縮の定量的記載はなく、予測し得ない顕著な効果とは認められないとした。