不当利得返還履行請求事件(住民訴訟)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 α市の住民である原告らが、α市が土地区画整理組合(補助参加人)に対して平成24年度から平成29年度までに6回にわたって交付した助成金合計2億9500万円について、補助参加人の理事長相談役であったAが勘定科目の偽装(本件科目偽装)を内容とする事業計画書を提出して不正に交付を受けたものであると主張し、α市長(被告)に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、補助参加人に不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を請求するよう求めた住民訴訟である。Aは元副市長であり、α市の臨時職員と補助参加人の理事長相談役を兼務していたところ、兼業禁止違反が報道され、第三者委員会の調査を経て、平成30年度の助成金8000万円につき詐欺罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けた。被告は平成30年度分については既に返還を受けていたが、本件はそれ以外の年度分に関するものである。 【争点】 主な争点は、①住民監査請求が相当な期間内にされたか、②訴えの利益の存否、③α市の補助参加人に対する請求権の有無であった。特に②について、被告が本件訴訟の係属中に本件助成金の各交付決定を取り消し、補助参加人に対して原告らの求める内容と同一の支払請求を行ったことから、訴えの利益が失われたかが中心的争点となった。原告らは、被告の支払請求は信義則・禁反言に反し許されないこと、住民訴訟の係属中に執行機関が請求をしても訴えの利益は失われないと主張した。 【判旨】 裁判所は、訴えの利益が失われたと判断し、本件訴えを却下した。被告が令和5年7月に本件助成金の各交付決定を取り消し、補助参加人に対して2億9500万円及び遅延損害金の支払を請求したことにより、原告らが本件訴訟で求めていた内容は全て実現したといえるとした。原告らの信義則・禁反言の主張については、被告と補助参加人との関係をいうものであり訴えの利益の有無に直接関係しないとし、さらに、原告らが刑事事件記録から入手した捜査報告書を提出したことが新たな事情となって被告の請求に至ったのであるから、告訴時点等で許容される請求がその後に許容されなくなる根拠はないと判示した。また、住民訴訟の目的に反するとの主張についても、原告らの訴訟活動を通じて支払請求が実現しており地方財務行政の適正な運営が図られたとして退けた。ただし、訴訟費用については、原告らの訴訟活動を通じて支払請求が実現したことに鑑み、補助参加により生じた費用は補助参加人の負担、その余は被告の負担とした。