著作権侵害差止請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 故笹沢左保が創作した時代小説「木枯し紋次郎」シリーズは、昭和47年に漫画化・テレビドラマ化・映画化され、広く知られた作品である。原告Aは故笹沢左保の妻であり、同人の全著作物に係る著作権を相続した者、原告会社はその著作権について独占的な利用許諾を受けた広告代理店である。 被告は食品製造販売会社であり、昭和47年6月から「紋次郎いか」という商品名で、パッケージに渡世人風の図柄(被告図柄)を付した食品を製造販売してきた。その後も「げんこつ紋次郎」等の商品に同様の図柄を付して販売を継続していた。 原告らは、被告が被告図柄及び「紋次郎」の語を商品に付して製造販売する行為が、本件各作品に係る複製権又は翻案権等を侵害するとともに、不正競争防止法2条1項1号又は2号の不正競争に該当すると主張し、差止め・廃棄及び約1億5126万円の損害賠償を請求した。 【争点】 1. 著作権侵害の有無:「紋次郎」の外観上の特徴(通常より大きい三度笠、通常より長い道中合羽、口にくわえた長い竹の楊枝、長脇差を携えた渡世人)が著作物として保護されるか。 2. 不正競争該当性:上記特徴を備えた表示が不正競争防止法上の「商品等表示」に該当し、被告商品との間で混同が生じるか。 3. 損害額。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも棄却した。 著作権侵害について、裁判所は、一話完結形式の連載小説における登場人物のいわゆるキャラクターは、小説の具体的表現から昇華した抽象的概念であって、それ自体が著作物とはいえないとする最高裁平成9年7月17日判決の法理を適用した。原告らは侵害された著作物を「紋次郎」の外観上の4つの特徴として特定したが、これは具体的な文章表現や図柄の特定ではなく、キャラクターという抽象的概念の保護を求めるものにほかならないと判断した。また、仮に上記記述自体を検討しても、渡世人が三度笠をかぶり道中合羽で身を包み長脇差を携えるという姿は江戸時代の渡世人としてありふれた事実であり、楊枝をくわえるという要素を加えても創作的表現とは認められないとした。さらに、被告図柄は三度笠が背丈ほどの巨大なものであるなど、本件渡世人の姿を直接感得できるものではなく、同一性も欠くと判断した。 不正競争該当性についても、原告ら主張の表示はキャラクターに関する識別情報にすぎず、本来的に商品又は営業の出所表示機能を有するものではないとした。加えて、被告図柄は昭和52年に商標登録を受け、被告が長年にわたり信用を蓄積してきた実情も踏まえ、誤認混同のおそれも認められないと判断した。