AI概要
【事案の概要】 タレントである原告が、芸能プロダクションである被告との間で専属契約を締結し芸能活動を行っていたところ、令和2年8月に本件契約の解除通知を送付した。被告は契約解除の有効性を争い、契約存続確認等を求める別件訴訟を提起したが、令和4年11月に本訴・反訴ともに棄却する判決が言い渡され、令和5年4月に同判決が確定した。被告は、解除通知受領後も令和5年4月の判決確定日まで、自社ホームページに原告の肖像写真及び氏名等の掲載を継続していた。原告は、この掲載行為が肖像権及びパブリシティ権の侵害に当たるとして、主位的に不法行為に基づく損害賠償金975万7000円及び肖像写真等の削除を求め、予備的に不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するとして同法4条に基づく損害賠償金382万8000円の支払を求めた。なお、原告は訴え提起後に訴えの全部を取り下げたが、被告がこれに同意しなかったため、審理が続行された。 【争点】 1. パブリシティ権侵害の有無:芸能事務所のホームページにおける所属タレント紹介としての肖像等の掲載が、専ら顧客吸引力の利用を目的とするものといえるか。 2. 肖像権侵害の有無:契約解除後も所属タレントとして肖像を掲載し続ける行為が、社会通念上受忍すべき限度を超える肖像権侵害に当たるか。 3. 不正競争防止法2条1項1号該当性:タレントの氏名・肖像が同号にいう周知な「商品等表示」に該当するか。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。パブリシティ権侵害については、最高裁平成24年2月2日判決(ピンク・レディー事件)の判断枠組みに依拠し、被告は所属タレントを紹介するホームページにおいて原告の所属事実を示し人物情報を補足するために肖像等を使用したにすぎず、肖像等それ自体を商品等として使用したものでも、商品等の差別化や広告として使用したものでもないとして、専ら顧客吸引力の利用を目的とする行為には当たらないと判断した。肖像権侵害については、本件写真は私的領域で撮影されたものではなく、原告を侮辱するものでもなく、平穏な日常生活を害するものでもないとした上で、仮に原告の主張を前提としても、契約解除の有効性が訴訟で争われていた事情を考慮すれば、判決確定まで掲載を継続した行為が受忍限度を超えるとはいえないと判断した。不正競争防止法については、原告の氏名・肖像は人物識別情報にすぎず、原告自身がプロダクション業務等の営業主体であった事実は認められないことから、営業等を表示する二次的意味を有する周知な商品等表示には該当しないとした。