AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(東京窯業株式会社)が、被告ら(JFEスチール株式会社及び品川リフラクトリーズ株式会社)が有する「ガス吹込みノズル用耐火物の製造方法」に関する特許(特許第6538584号)について、特許庁に無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。 本件特許は、製鋼用の溶融金属にガスを吹き込むノズル用耐火物の製造方法に関するもので、炭素含有耐火物に金属細管を埋設し、非酸化焼成した後に残炭率30質量%以上の有機物を含浸させることを特徴とする。原告は、計12の無効理由(進歩性欠如及びサポート要件違反)を主張し、5つの取消事由を掲げて審決の取消しを求めた。 【争点】 主な争点は、①甲1発明(先行特許文献)と甲2(先行特許文献に記載された非酸化焼成後の有機物含浸技術)を組み合わせる動機付けの有無(進歩性、取消事由1・2)、②本件発明2ないし7の進歩性(取消事由3)、③本件発明1及び2のサポート要件適合性(取消事由4・5)である。特に、甲2の有機物含浸技術を甲1発明や甲4発明に適用して本件発明の構成に至ることが当業者にとって容易であったかが中心的争点であった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。 進歩性について、裁判所は、甲2発明の気体吹込羽口の周囲に使用するマグネシア・カーボン煉瓦は、酸素吹込みによるホットスポットの高熱や不活性ガスによる冷却作用により激しい温度勾配や熱衝撃が加えられる過酷な環境下の内張煉瓦として使用される前提でクリープ変形を防ぐものであるのに対し、甲1発明や甲4発明の耐火物はそれ自体が気体を吹き込む部材であり、酸素吹込みによるホットスポットの高熱は想定されていないと指摘した。両者は使用態様や使用環境が異なるため、甲2の技術的事項を甲1発明又は甲4発明に適用する動機付けがあるとはいえないと判断した。さらに、仮に動機付けがあったとしても、破壊エネルギーの向上による亀裂伸展の抑制という本件発明の効果は、先行文献に記載も示唆もなく、当業者が予測できない顕著なものであるとして、進歩性を肯定した。 サポート要件についても、本件明細書の記載に基づき、非酸化焼成の技術的意義や課題解決の仕組みが十分に開示されていると認め、原告の主張をいずれも退けた。