私電磁的記録不正作出・同供用
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人両名は、共謀の上、インターネット宿泊予約サイト「B.com」を運営する株式会社Bの事務処理を誤らせる目的で、令和元年8月25日から同年11月17日までの間、113回にわたり、真実は宿泊する意思がないのに、104名の架空名義を用いて101施設に対する内容虚偽の宿泊予約を行い、同社サーバコンピュータに虚偽の情報を記録させたという、私電磁的記録不正作出・同供用の事案である。被告人らは、宿泊予約により取得したTポイントを利用してホテルに宿泊するなどしていた。被告人らは犯行を全面的に否認し、捜索差押えの違法や証拠能力、犯罪の成否等を争った。 【争点】 主な争点は、①被告人らが意思を通じ合い架空宿泊予約をしたか(犯人性・共謀)、②私電磁的記録不正作出罪・同供用罪が法律上成立するか、③捜索差押え等の手続の違法性及び同意書の任意性であった。③について弁護人は、ホテル客室への立入り時に令状が呈示されなかったこと等を主張し、違法収集証拠として証拠能力を争った。②について弁護人は、B社は予約情報の正確性を吟味しておらず、架空予約は「事務処理を誤らせる」行為に当たらないと主張した。 【判旨(量刑)】 争点③について、裁判所は、警察官が捜索差押許可状を呈示せずにホテル客室に立ち入った点は刑訴法110条に反し違法であると認めたが、入室直後に令状を呈示して適法に捜索差押えを開始しており、違法性の程度は低く、令状主義の精神を没却するような重大な違法はないとして証拠能力を肯定した。同意書の任意性についても、被告人A2が記載したパスワードが犯行に使用されたYahooIDのパスワードと一致していること等から、被告人の供述は信用できないとして任意性を認めた。争点①について、裁判所は、被告人A2のスマートフォンの家計簿アプリに犯行使用のYahooIDとTポイント数が記録されていたこと、被告人A1のノートにもYahooIDが記載されていたこと、両名が犯行使用IDのパスワードを知っていたこと、犯行期間中に犯行場所のホテルに宿泊していたこと等を総合し、被告人らが共謀の上全ての犯行に及んだと認定した。争点②について、宿泊予約サイトの仕組みは予約情報が正しいことを前提としており、架空予約はB社の事務処理を誤らせるものであるとして、私電磁的記録不正作出罪・同供用罪の成立を認めた。量刑については、多数回の犯行による被害会社の宿泊予約情報に対する信頼の毀損は大きく悪質であること、犯行を否認し反省を示さないことを指摘しつつ、法定刑が5年以下の懲役にとどまること及び前科がないことを考慮し、被告人両名をそれぞれ懲役2年・執行猶予4年に処した(求刑:被告人A1につき懲役2年6月、被告人A2につき懲役2年)。