商標権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 安全衛生保護用具等の販売会社である原告が、同業の被告に対し、「熱中対策応急キット」との被告標章を付した商品の販売等が原告の商標権(登録第6526506号「熱中対策応急キット」、標準文字)を侵害するとして、商標法36条1項に基づく差止め、同条2項に基づく標章の抹消、及び不法行為に基づく損害賠償金81万2000円等の支払を求めた事案である。被告は平成31年4月から「熱中対策応急キット」の名称で熱中症対策用品一式を収納バッグに入れたセット商品を販売しており、原告は令和3年4月に本件商標を出願し、令和4年3月に登録を受けていた。本件商標と被告標章が同一又は類似であること、指定商品と対象商品が同一又は類似であることは争いがなかった。 【争点】 主な争点は、(1)本件商標の商標法3条1項3号(記述的商標)に基づく無効理由の有無、(2)被告標章の同法26条1項2号該当性(用途の普通表示)、(3)同項6号該当性(自他商品識別力のない態様での使用)、(4)権利濫用の成否、(5)損害額、(6)差止めの必要性であった。被告は、「熱中対策応急キット」は熱中症対策の応急処置用キットという商品の用途を表示するにすぎず、商標登録は無効であると主張した。原告は、「熱中」の語は「物事に夢中になること」を意味し、「熱中症」を直ちに想起させるものではないから記述的商標には当たらないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、取引の実情として、ミドリ安全が平成24年から「熱中対策応急キット」の名称で熱中症応急対応用品一式を販売し、その後、中央労働災害防止協会、つくし工房、ユニット、レンタルのニッケン、エスアールエスなど多数の法人が同一又は類似の名称で同種商品を広告販売してきた事実を認定した。原告自身も平成31年から「熱中対策キット」の名称で同種商品を販売していた。裁判所は、「熱中」の語が「熱中症」の「症」を除いた2文字と一致し、熱中症を示すものとみても不自然ではないこと、及び上記取引の実情を総合し、本件査定日(令和4年2月28日)の時点で「熱中対策応急キット」の語は熱中症の対策・応急処置に用いる物品一式との意味で一般に認識されていたと判断した。したがって、本件商標は商品の用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法3条1項3号に該当し、無効審判により無効とされるべきものであるから、原告は被告に対し本件商標権を行使することができないとして、その余の争点を判断するまでもなく原告の請求をいずれも棄却した。