地方自治法第245条の8第3項の規定に基づく埋立地用途変更・設計概要変更承認命令請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面埋立事業に関し、沖縄防衛局が公有水面埋立法に基づき埋立地の用途変更・設計概要変更の承認申請(本件変更申請)をしたところ、被告(沖縄県知事)が変更不承認処分をした。原告(国土交通大臣)はこれを取り消す裁決をし、さらに変更承認をするよう是正の指示をしたが、被告はなお承認しなかった。被告は国地方係争処理委員会への審査申出や取消訴訟を提起したが、令和5年9月4日の最高裁判決(令和5年最高裁判決)において、被告が変更申請を承認しないことは法令の規定に違反すると判断され、被告の上告は棄却された。それでもなお被告が承認しなかったため、原告は地方自治法245条の8第3項に基づき、被告に変更申請の承認を命ずる代執行訴訟を提起した。 【争点】 ①法令違反等の要件(被告の事務処理が法令に違反するか)、②補充性の要件(代執行以外の方法で是正を図ることが困難か)、③公益侵害の要件(放置により著しく公益を害することが明らかか)の3点が争われた。被告は、令和5年最高裁判決は裁決の拘束力違反を認めたにすぎず公有水面埋立法の要件充足についての実体判断はしていないと主張し、また、国が沖縄県との対話の場を設けるべきであり対話なき代執行は補充性を欠くと主張した。さらに、公益侵害について、工期が最短12年に及ぶことから普天間飛行場の危険除去という公益侵害は抽象的にすぎず、沖縄戦以来の歴史的経緯を背景とする沖縄県民の民意も公益として考慮すべきであると主張した。 【判旨】 裁判所は、3要件すべての該当性を認め、原告の請求を認容した。①法令違反等の要件について、令和5年最高裁判決により、被告の変更不承認が公有水面埋立法の各規定に違反することは確定しており、被告が同判決後もなお承認しないことは法令違反に該当すると判断した。被告の主張する実体審理の必要性は独自の見解であり失当とした。②補充性の要件について、被告の承認拒否の意思は明確かつ強固であり、代執行以外の方法による是正は困難であると認定した。被告の主張する「対話」は変更申請を承認しないことを前提とするものであり、法定受託事務の適正な執行を図るための措置には当たらないとした。③公益侵害の要件について、普天間飛行場の危険性は人の生命・身体に関わるものであり、変更申請から約3年半が経過していることも踏まえ、放置すれば事業の進捗が更に遅延し危険性除去の実現が阻まれると認定した。加えて、県知事が最高裁判決で法令違反と判断されたにもかかわらずこれを放置することは、法の支配・法治主義の理念を著しく損なうものであり、社会公共の利益を甚だしく害するとした。もっとも、裁判所は付言として、沖縄県民の心情は十分理解できるところであり、国としても沖縄県民の心情に寄り添った政策実現が求められているとし、国と沖縄県が相互理解に向けて対話を重ね抜本的解決が図られることが強く望まれると述べた。