AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(株式会社東京精密)が、被告(浜松ホトニクス株式会社)の有する「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」に関する特許(特許第4601965号)の請求項13、15、16に係る発明について無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。本件各発明は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、切断予定ラインに沿って改質領域を形成するレーザ加工装置に関し、加工用の第一のレーザ光と測定用の第二のレーザ光を同一レンズで集光し、主面の変位を取得しながらレンズと主面との間隔を調整して改質領域を形成する構成等を特徴とするものである。 【争点】 甲1発明(国際公開第02/22301号記載の発明)に、周知の技術的事項1(半導体ウェーハの反りに対応して測距用レーザ光で主面の変位を取得し、加工用レーザ光の焦点位置を調整する技術)及び周知の技術的事項2(シリコンウェハ端部の平坦でない部分で合焦動作を一時停止し、通過後に再開する技術)を適用して、本件各発明の構成に容易に想到できたか否か(進歩性の有無)。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。裁判所は、まず周知の技術的事項1が半導体ウェーハの表面を加工する際の焦点位置調整技術であるのに対し、甲1発明は加工対象物の内部に集光点を合わせて改質領域を形成するものであり、その目的や機序が本質的に異なることから、甲1発明に周知の技術的事項1を適用する動機付けがないと判断した。原告は、加工中のAF(オートフォーカス)制御の必要性は当業者の技術常識であると主張したが、裁判所は、甲1にはシリコンウェハの反りについて何らの言及もなく、甲1発明では改質領域の位置にある程度の幅が許容されることから、集光点のずれが直ちに加工品質に影響するとはいえないとした。また、周知の技術的事項2についても、甲1にはシリコンウェハの一端部の加工を前提とした記載がなく、適用の動機付けがないとした。以上から、相違点2~4に係る本件発明1の構成を容易に想到できたとはいえず、本件発明2及び3についても同様に進歩性が認められるとして、審決の判断に誤りはないと結論づけた。