損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「特定加熱食肉製品、特定加熱食肉製品の製造方法及び特定加熱食肉製品の保存方法」とする特許権(特許第5192595号)を有する訴外シンコウフーズから独占的通常実施権を付与された控訴人(スターゼン株式会社)が、被控訴人(滝沢ハム株式会社)の製造販売するローストビーフの製造方法が上記特許の技術的範囲に属するとして、民法709条及び特許法102条2項に基づき、約2億2101万円の損害賠償を請求した事案の控訴審である。原審は、本件特許の請求項1に係る発明は先行技術に基づき無効とされるべきとして請求を棄却した。控訴審において、無効審判の審決取消訴訟の確定を経て、控訴人は訂正後の請求項5に基づく請求に変更した。 【争点】 (1) 被控訴人方法が本件発明の構成要件B(酸素化する工程)、C(非鉄系脱酸素材とともにガスバリア性包材に密封する工程)、D(所定のミオグロビン割合)を充足するか、(2) 公知発明(鎌倉山パストラミビーフ、DCSローストビーフ等)に基づく進歩性欠如や明確性要件違反等の複数の無効理由の成否、(3) シンコウフーズから控訴人への損害賠償請求権の債権譲渡の有効性、(4) 消滅時効の成否、(5) 損害額が主な争点となった。 【判旨】 裁判所は、原判決を取り消し、315万7627円及び遅延損害金の支払を命じた。構成要件充足性について、被控訴人方法ではスライスから密封まで約2分30秒間空気に曝されており、技術常識に照らし「数分」の酸素化処理時間に該当するとして構成要件Bの充足を認めた。構成要件Cについては、密封後に脱酸素剤の作用で酸素濃度が検出限界以下(0.1%以下)に達すれば足り、被控訴人の支配下で達する必要はないとした。構成要件Dについては、包材越しにSCE方式で吸光度を測定する方法が当業者の理解として相当であるとし、測定結果が所定のミオグロビン割合を満たすことを認定した。無効理由については、加熱食肉製品(発色剤使用)と特定加熱食肉製品(オキシミオグロビンによる発色)とでは発色原理が全く異なるため、公知の加熱食肉製品の製造方法を特定加熱食肉製品に適用する動機付けがないとして、進歩性欠如をいずれも否定し、明確性要件違反、実施可能要件違反、サポート要件違反もすべて退けた。消滅時効については、訴訟係属中に催告が継続していたとして時効消滅を否定した。損害額については、競合品の存在、被控訴人の営業努力、本件発明の効果の限定性等を考慮し、被控訴人の利益の80%について推定覆滅を認め、消費税相当額及び弁護士・弁理士費用を加算して315万7627円と算定した。