AI概要
【事案の概要】 本件は、原告(ポータル インストルメンツ,インク)が「インジェクターカートリッジ」の意匠登録出願をしたところ、特許庁が引用意匠(「注射器用シリンジ」)と類似するとして意匠法3条1項3号に該当すると判断し、拒絶査定不服審判の請求を不成立とした審決の取消しを求めた事案である。本願意匠はパリ条約による優先権主張(米国、2019年2月4日)を伴う出願であり、略縦長円筒状の本体部にノズル部・肩部・フランジ部を有する形態のものである。審決は、本願意匠に係る物品を「医療用注射器の外筒の用途及び機能を有するもの」と認定し、引用意匠に係る物品(注射器用シリンジ)と同一であるとした上で、形態の共通点が基調を形成し相違点の影響は小さいとして両意匠は類似すると判断した。原告は、本願意匠の物品は自動注射器等に挿入される交換可能な薬液容器(カートリッジ)であって、注射器の外筒(バレル)とは用途・機能・需要者・使用態様が異なると主張した。 【争点】 主な争点は、(1)本願意匠に係る物品の認定の当否(「インジェクターカートリッジ」は「医療用注射器の外筒」か「注射器用の交換可能な薬液容器」か)、(2)本願意匠と引用意匠の物品の同一性・類似性、(3)審査段階で物品の共通性を認めていた原告が訴訟で異なる主張をすることが禁反言に抵触するか、(4)相違点の看過の有無、(5)両意匠の形態の類否判断の当否である。 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。まず禁反言の主張について、拒絶査定不服審判は職権審理であって自白の拘束力はなく、権利設定の適否が問題となる審決取消訴訟において出願人が審査段階と異なる主張をすることは許されるとした。次に物品の認定について、「インジェクター」は注射器を意味し、「カートリッジ」は交換用の液体等を充填した小容器を意味するところ、浄水器カートリッジ等の用例に照らせば「インジェクターカートリッジ」は「注射器用のカートリッジ」を意味すると解するのが相当であり、「カートリッジ」が「外筒」を意味するとは認められないと判断した。その上で、本願意匠に係る物品は「注射器用の交換可能な液体・ガスなどを充填した小容器」であるのに対し、引用意匠は注射器用外筒であるから、両物品は共通せず、物品の認定を誤った審決には違法があるとして取り消した。