特許権侵害行為差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「半導体集積回路装置及びその製造方法」とする特許(特許第3593079号)の特許権者である控訴人(合同会社IP Bridge1号)が、被控訴人(マイクロンジャパン株式会社)に対し、被控訴人が輸入・販売するDRAM製品が本件特許の技術的範囲に属し特許権を侵害するとして、特許法100条1項・2項に基づく差止め・廃棄、および民法709条に基づく損害賠償金1億円(一部請求)等の支払を求めた事案の控訴審である。本件特許は元来松下電器産業(現パナソニック)が出願・登録したもので、その後控訴人に移転登録され、自己信託がされている。本件特許の技術的内容は、DRAM等のメモリ回路を搭載したシステムLSIにおいて、品種によりマスクパターンレイアウトが異なることに起因するゲート電極等の寸法ばらつきを、ダミーパターンの挿入により防止する技術に関するものである。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主たる争点は、被控訴人のDRAM製品が本件発明の「半導体集積回路装置」に該当するか否かである。控訴人は、「半導体集積回路装置」はシステムLSIに限定されず汎用DRAMを含むと主張し、その根拠として、(1)本件明細書の記載が汎用DRAMを排除していないこと、(2)ダミーパターン挿入による寸法ばらつき防止という課題解決原理はDRAM内部でも妥当すること、(3)審査経過において審査官もDRAMを含むものと理解していたことを挙げた。これに対し被控訴人は、本件発明はDRAMの「搭載率」の違いを前提とするシステムLSIの技術であり、DRAM自体にDRAMを搭載する概念はあり得ないと反論した。また、被控訴人は控訴審で新たに記載要件違反、補正要件違反、新規性・進歩性欠如の無効主張も追加した。 【判旨】 知財高裁は、控訴を棄却した。裁判所は、本件明細書の各記載(発明の属する技術分野、従来の技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、実施例、発明の効果)を詳細に検討した上で、本件発明の「半導体集積回路装置」はシステムLSIを意味するものであり、DRAM単体はこれに含まれないと判断した。具体的には、本件発明の課題は、DRAM等のメモリ回路の搭載率が品種により異なるシステムLSIにおける寸法ばらつきの防止にあり、本件明細書にはDRAM自体を「半導体集積回路装置」として課題解決手段を用いることを示唆する記載はないとした。また、DRAM内部でもメモリセルアレイ領域と他の回路領域の間でゲート電極周縁長のばらつきがあるとの控訴人の主張についても、それがDRAMチップ全体のCDロスに許容できないほどの変動をもたらすことは明細書に言及がなく、証拠も不十分であるとして退けた。その結果、DRAM製品である被控訴人製品は構成要件を充足せず、特許権侵害は認められないと結論づけた。