国家賠償等請求事件、損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 建設中のマンション近隣に住む原告(薬剤師、薬局3店舗経営)が、マンション建設に反対し、建設工事現場でダンプカーの進行を妨害しようとした際、施工業者の現場責任者である被告Dに暴行を加えたとして現行犯逮捕され、15日間の身柄拘束を受けた後、暴行罪で起訴されたが、無罪判決を受けて確定した。原告は、甲事件として、①愛知県に対し、警察官による違法な逮捕・取調べ・捜索差押えを理由とする国家賠償請求(550万円)、②国に対し、検察官による違法な勾留請求・勾留期間延長請求・公訴提起を理由とする国家賠償請求(550万円)、③捜査時に取得された指紋・DNA型・顔写真・携帯電話データの抹消請求を行った。また、乙事件として、被告D及びその使用者である被告会社に対し、虚偽の被害申告による不法行為に基づく損害賠償(連帯して1100万円)を請求した。 【争点】 主な争点は、①現行犯逮捕・取調べ・捜索差押えの国賠法上の違法性、②勾留請求・公訴提起の国賠法上の違法性、③被告Dが虚偽の被害申告をしたか、④無罪確定後も指紋・DNA型・顔写真等のデータを保管し続けることの適否である。 【判旨】 裁判所は、逮捕・勾留・起訴の違法性について、防犯カメラ映像や目撃者の供述等から、各処分時点で刑訴法上の要件を欠くことが明らかであったとはいえないとして、いずれも国賠法上違法とは認めなかった。被告Dの虚偽供述の主張についても、原告の何らかの動作により被告Dに力が加わったために、原告から両手で突き飛ばされたと推測して被害申告をした可能性を排斥できないとして退けた。他方、無罪確定後のデータ抹消請求について、裁判所は、指紋・DNA型・顔写真はみだりに取得・利用されない自由が保障される人格的利益であるとした上で、無罪判決が確定した場合には、余罪や再犯のおそれ等のより具体的な保管の必要性が示されない限り「保管する必要がなくなった」と解すべきであるとの判断枠組みを示し、原告に前科前歴がないこと、事件の背景となったマンション建設紛争が終結していること等を考慮して、指紋・DNA型・顔写真の各データの抹消を命じた。なお、携帯電話のデータについては、刑事確定訴訟記録法に基づく保管であり、新たな捜査目的ではないとして抹消請求を棄却した。本判決は、無罪確定者の生体情報データベース保管の適法性について、諸外国の立法例も参照しつつ正面から判断を示した点で実務上重要な意義を有する。