AI概要
【事案の概要】 本件は、原告が、被告の有する「他者保護用の衛生マスク」に関する特許(特許第5174984号)について特許無効審判を請求したところ、特許庁が訂正を認めた上で審判請求不成立の審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。対象特許は、着用者の口と鼻を露出させた状態で飛沫の飛散を遮断する合成樹脂製の衛生マスクに関するもので、U型に湾曲成型された下部ボディと呼吸器前方カバー体を一体に構成した点に特徴がある。特許無効審判は、特許権の有効性を事後的に争う制度であり、利害関係人は特許庁に対し無効審判を請求でき、その審決に不服がある場合は知的財産高等裁判所に取消訴訟を提起できる(特許法178条)。原告は韓国優先権出願を経た分割出願の経緯も踏まえ、訂正要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反及び分割要件違反を前提とする進歩性欠如の4つの取消事由を主張した。 【争点】 (1) 訂正要件の判断の誤り(特許請求の範囲の実質的拡張の有無) (2) サポート要件の判断の誤り(「一体に構成され」の構成及びマスク材料の限定に関する記載要件充足性) (3) 明確性要件の判断の誤り(「一体に構成され」の構成の明確性) (4) 分割要件違反を前提とする進歩性の判断の誤り 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。争点(1)について、訂正の適否は訂正前後の特許請求の範囲の記載を基準として判断すべきであるところ、原告の主張は本件訂正前の請求項ではなく原出願又は親出願の請求項との対比を問題とするものであり、主張自体理由がないとした。争点(2)及び(3)について、本件訂正が適法である以上、サポート要件及び明確性要件の適合性は訂正後の発明について判断すべきであるところ、原告の主張は訂正前の発明に係る要件違反をいうにとどまり、訂正後の発明に関する主張を含むものと解することはできないとして、いずれも主張自体理由がないと判断した。争点(4)について、原告は先行文献記載の発明の具体的特定や一致点・相違点の主張を行っておらず、主張自体理由がないとした。本判決は、訂正請求がなされた場合の無効審判における主張立証の在り方について、訂正後の発明を基準とすべきことを改めて確認した事例である。