AI概要
【事案の概要】 本件は、職業写真家である原告が、氏名不詳者らがツイッター(現X)上に原告撮影の写真5点を無断で投稿し、原告の著作権(公衆送信権)を侵害したとして、ツイッター社(被告)に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項に基づき、各アカウントの電話番号・メールアドレスに加え、ログイン時のIPアドレス及びタイムスタンプ(最新ログイン時のものを含む)の開示を求めた事案である。同法に基づく発信者情報開示請求は、インターネット上の匿名の権利侵害に対し、被害者が加害者を特定して損害賠償請求等の権利救済を図るための制度であるが、開示される情報が発信者のプライバシーや通信の秘密に関わるため、厳格な要件の下でのみ認められる。本件では、侵害情報の送信時ではなくアカウントへのログイン時に記録されたIPアドレス等が開示対象となるかが中心的な争点となった。 【争点】 主要な争点は、ログイン時IPアドレス等が法4条1項の「権利の侵害に係る発信者情報」及び省令5号・8号に該当するかである。被告は、ログイン行為は侵害情報の発信行為とは全く別個の行為であり、ログイン時の情報は法4条1項の開示対象に含まれないと主張した。さらに被告は、省令の規定は限定列挙であり拡張解釈は許されないこと、省令8号が「侵害情報が送信された年月日及び時刻」と規定していることから投稿時のタイムスタンプのみが対象であること、特に最新ログイン時の情報は侵害行為との関連性が最も希薄であることを主張した。一方、原告は、ツイッターのパスワード管理の厳格さからログインした者と発信者の同一性が強く推認されること、法4条1項の「係る」という文言は関係する情報を広く含む趣旨であることを主張した。 【判旨】 裁判所は原告の請求を全部認容した。まず、法4条1項が「権利の侵害に係る発信者情報」と規定し、権利侵害行為そのものに使用された情報に限定していないことから、侵害行為に関係する情報を含むと解するのが相当であるとした。そして、権利侵害行為の送信時点ではなくその前後に割り当てられたIPアドレス等であっても、当該侵害情報の発信者のものと認められる場合には開示対象となると判示した。省令5号も「侵害情報に係る」と規定しており送信時に限定する規定ぶりではないとし、省令8号のタイムスタンプもログイン時のものを含むと判断した。最新ログイン時の情報についても、ツイッターではパスワード管理によりログインした者と投稿者の同一性が担保されており、アカウントの第三者譲渡等の特段の事情がない限り、投稿との時間的間隔にかかわらず開示対象となるとした。