課徴金納付命令処分取消請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、画像処理技術の研究開発等を目的とする上場企業モルフォの従業員であった原告ら2名が、金融庁長官から課徴金納付命令を受けたため、その取消しを求めた行政訴訟である。金融庁長��は、モルフォの代表取締役eがデンソーとの業務提携を「行うことについての決定」をしたという重要事実を原告らが職務上知りながら、法定の除外事由なく、モルフォ従業員持株会の拠出口数を増加させる方法でモルフォ株式を買い付けたことがインサ���ダー取引に該当するとして、原告aに課徴金2万円、原告bに課徴金4万円の各納付命令をした。金融商品取引法166条は、上場会社の従業員が業務等に関する重要事実を職務に関し知った場合、公表前の特定有価証券等の売買を禁止しており、本件では同条2項1号ヨ所定の「業務上の提携」を「行うことについての決定」の成立時期と、原告らがこれを「知つた」か否かが争われた。 【争点】 主要な争点は3つある。第1に、モルフォ代表取締役eが単独で金商法166条2項1号の「業務執行を決定する機関」に該当するか。第2に、eが平成27年8月4日の打合せ後にした「分かりました」との回答(本件回答)が「業務上の提携」を���行うことについての決定」に該当するか���第3に、原告らが本件重要事実を自己の職務に関し「知つた」といえるか。被告は、eが同社唯一の代表取締役として実質的な意思決定機関であり、8月4日の本件回答により決定がなされ、原告らは定例会議等を通じて遅くとも9月28日ないし10月5日までに重要事実を知ったと主張した。原告らは、業務執行を決定する機関はeと取締役gの合議体であること、本件回答は単なる報告の了解にすぎないこと、定例会議の報告内容は通常の営業活動と区別できなかったことを主張した。 【判旨】 裁判所は、原告らの請求をいずれも認容し、各課徴金納付命令を取り消した。まず争点1について、eはモルフォの創業者・代表取締役・筆頭株主であり有価証券報告書にも経営方針等の決定者と記載されていたことから、「業務執行を決定する機関���に該当すると認定した。次に争点2について、「行うことについての決定」は一般投資家の投資判断に影響を及ぼすべきものとしてある程度具体的な内容を持つものでなければならないとの判断枠組みを示した上で、8月4日時点では本件協業の内容は投資判断に影響を及ぼす程度の具体性を持っておらず、eの「分かりました」との回答も事実経過の了承にすぎないとして、9月18日の打合せにおいてeが決定をしたと認定した。争点3については、モルフォ社内でインサイダー情報の管理が行われ技術週報の記載が抽象的にされていたこと、モルフォでは通常の営業活動にも「協業」の用語を使用しており他社との同規模の案件も並行して進行していたこと等から、原告らは技術週報の記載内容を通常の営業活動の範囲内と認識したにとどまり、��業務上の提携」であるとの未必的認識も一般投資家の投資判断に影響を及ぼす程度の内容であるとの認識も有していたとは認められないとして、原告らが重要事実を「知つた」とはいえないと判断した。