憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ネ77
- 事件名
- 憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年1月27日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 塩田直也、榎本康浩、渡邉健司
- 原審裁判所
- 岡山地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、衆議院議員である控訴人が、他の衆議院議員119名と連名で憲法53条後段に基づく臨時会召集決定を要求(本件召集要求)したにもかかわらず、内閣が合理的期間内に臨時会の召集を決定せず、要求後98日が経過するまで召集を怠ったことについて、国会議員としての権能行使を侵害されたと主張し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等の支払を求めた国家賠償請求訴訟の控訴審である。憲法53条後段は「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と定めており、本件は同規定に基づく内閣の召集義務の法的性質と、個々の国会議員の主観的権利利益の有無が正面から問われた事案である。原審は控訴人の請求を棄却し、控訴人が慰謝料1万円の支払を求める限度で一部控訴した。 【争点】 主な争点は、憲法53条後段に基づく臨時会召集要求があった場合に、内閣が個々の国会議員に対し、国家賠償法1条1項適用上の職務上の法的義務として臨時会召集を決定する義務を負うか否かである。控訴人は、国会活動が職業活動の自由(憲法22条1項)、表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく主観的な権利利益でもあり、内閣の召集懈怠がこれらを侵害したと主張した。これに対し被控訴人(国)は、憲法53条後段は個々の国会議員の法的権利を保護する趣旨の規定ではなく、控訴人に国賠法上保護される権利利益の侵害はないと反論した。 【判旨】 控訴棄却。当裁判所は、憲法53条の趣旨について詳細な解釈を展開した。同条前段は臨時会の召集決定権を内閣に帰属させ、後段は議院の総議員の4分の1以上の要求により実質的に国会が自律的に会期を開始できるようにした規定であり、同条は前段・後段とも内閣と国会という機関相互の権限分配を定めたものと解すべきであるとした。そして、臨時会召集要求権は実質的に国会と内閣の機関相互間の権限の問題であるから、召集要求に参加した個々の国会議員は、召集要求自体において公益に解消されない主観的利益としての国賠法上保護される権利利益を有しないと判断した。控訴人が主張する国会活動への侵害についても、それは臨時会が召集されたならばなし得たであろう仮定的・抽象的な国会活動の可能性にすぎず、国賠法の保護対象とはならないとして、控訴人の請求を棄却した。