特許権侵害損害賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、加熱式タバコ用デバイス「IQOS」に関する特許権(特許第5854394号、発明の名称「エアロゾル発生システムのための加熱アセンブリ」)を有する原告が、「jouz 20」「jouz 12」「jouz Pro」という商品名の加熱式タバコ用デバイスを販売等する被告に対し、特許権侵害に基づく損害賠償を請求した事案である。本件特許は、加熱式タバコのタバコスティックを内部から加熱するための加熱アセンブリに関するもので、電気抵抗式加熱要素とヒータ基板を含むヒータ、及びヒータに結合されたヒータマウントを備え、加熱要素の第1の部分が第2の部分よりも高温に加熱される構成を特徴とする。被告製品は「IQOS専用たばこスティック対応」と銘打ち、原告タバコスティックとの互換性を売り物にして販売されていた。原告は特許法102条2項又は3項により算定した損害額の一部である7143万7327円及び遅延損害金の支払を求めた。 【争点】 主な争点は、(1)被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(構成要件Cの「ヒータに結合された」の充足性、構成要件G・Hの「保持領域」の充足性)、(2)本件特許が無効とされるべきか(乙3公報・乙4公報・乙5公報に基づく進歩性欠如、サポート要件違反)、(3)損害額(特許法102条2項の推定覆滅事由の有無を含む)である。 【判旨】 裁判所は、争点(1)について、構成要件Cの「結合」はヒータとヒータマウントが1つのユニットを形成していれば足り、不可分一体である必要はないと解釈し、被告製品のヒータマウントは加熱ブレードに取り付けられて1つのアセンブリを形成しているとして充足を認めた。「保持領域」についても、ヒータマウントによって支持されているヒータ基板の領域であれば直接接触の有無を問わないと解釈し、被告製品における緩衝ゴムやAB樹脂の介在は充足を否定する事情にならないとした。争点(2)について、乙3公報の電気絶縁部はペーストを注入・乾燥して形成されるもので本件発明の「ヒータ基板」とは異なり、乙4発明を適用しても基本構造が異なるため容易想到とはいえないとして、進歩性欠如の主張を全て排斥した。損害額については、特許法102条2項に基づき被告の限界利益額を原告の損害額と推定し、被告が主張した推定覆滅事由(被告製品の優位性、競合品の存在、営業努力、一部実施、関連事件の存在)をいずれも認めず、弁護士費用及び消費税を加算した5185万2556円を認容した。