AI概要
【事案の概要】 本件は、家庭用磁気治療器の販売等を業とするA株式会社の代表取締役会長であった被告人が、同社の資金繰りがひっ迫し、顧客への元本返済や配当金の支払を継続できる見込みがなかったにもかかわらず、これを秘して顧客から金銭をだまし取った詐欺の事案である。被告人は、全国各地で開催される説明会において、老後の生活への不安を巧みにつくなどの営業活動を通じ、あたかもA社の業績が好調で財務基盤も安定しているかのように装い、業務提供誘引販売取引及びリース債権譲渡取引に係る契約代金の名目で、年利6〜8.57パーセントの配当と元本の確実な返済を約束して顧客を勧誘した。実際には、新規顧客からの資金を既存顧客への返済に充てる自転車操業の状態にあった。業務提供誘引販売取引とは、事業者が提供する商品等を利用した業務に従事することで利益が得られると勧誘し商品を購入させる取引形態であり、特定商取引法で規制されている。被告人は、平成29年7月から12月にかけて約4か月間に、被害者20名から合計約1億6556万円をだまし取った。なお、A社は平成28年12月及び平成29年3月の二度にわたり消費者庁から業務停止命令等の行政処分を受けていたが、被告人はこれを顧みず犯行に及んでいる。 【量刑の理由】 裁判所は、本件が企業活動の形で行われた大型詐欺事犯であり、被告人がワンマン体制の下でA社を掌握し、経営ひっ迫の事実を社員にも知らせず組織的に犯行を遂行した点を重視した。特に、平成20年の時点で監査役から経営方針の不健全性と刑事問題化の可能性を指摘されながら改善せず、消費者庁の二度の行政処分後も問題のある経営を継続し、返金を求める顧客に対しては撤回を強く求めるよう社員に指示していた経緯から、顧客の財産をないがしろにしてA社の延命を図ったと認定し、経緯・動機において非常に強い非難が妥当するとした。被害額が高額で大部分が未返還であること、被害者らの処罰感情が厳しいことも指摘された。他方、当初から詐欺目的があったわけではないこと、高額報酬をA社に貸し付けており私利私欲を図った証拠がないこと、被告人が事実を認め反省の態度を示していること、高齢で健康上の問題を抱えていること等を考慮した上で、求刑懲役10年に対し、懲役8年を言い渡した。