不正競争行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、プラスチック製品の設計・製造等を業とする原告が、建築金物等の製造販売を業とする被告に対し、不正競争防止法に基づく差止め・廃棄及び損害賠償を求めた事案である。原告と被告は、被告が企画した樹脂製宅配ボックスの開発プロジェクトを共同で進めていたが、原告は試作品製作のために自社で作成した3DCADデータ(Mタイプ及びSタイプの2種類。以下「本件データ」という。)を被告に送付した。ところが、条件面の不一致からプロジェクトが頓挫した後、被告は本件データに変更を加えて独自に被告製品を製造・販売した。不正競争防止法2条6項は、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす情報を「営業秘密」と定義し、同法2条1項7号は営業秘密の不正使用を、同項10号はその成果物の譲渡等を不正競争行為と規定している。原告は本件データが営業秘密に該当し、被告の行為がこれらの不正競争に当たると主張して、被告製品の差止め・廃棄並びに6000万円の損害賠償を請求した。 【争点】 主要な争点は、(1)本件データの営業秘密該当性(秘密管理性・有用性・非公知性)、(2)被告製品の製造が本件データの「使用」に当たるか、(3)「不正の利益を得る目的」の有無、(4)損害額の算定、(5)差止め・廃棄の必要性であった。特に秘密管理性について、本件データの送付メールに秘密表示がなかった点が争われた。被告は、機密保持契約上の定義では秘密明示のない情報は機密情報に当たらないと主張した。損害額については、原価以上で販売した製品、廉価販売した製品、無償提供した製品の3類型に分けた算定方法が争点となった。 【判旨】 裁判所は、本件データの営業秘密該当性を肯定した。秘密管理性については、原告社内でのアクセス制限措置に加え、プロジェクト開始時に機密保持契約が締結されていたこと、以前に送付した別の3Dデータについて被告従業員が第三者共有の許可を求めるなど秘密前提の行動をとっていたことから、本件データに秘密表示がなくても被告において秘密管理を容易に認識可能であったと判断した。被告製品は本件データに基づき変更を加えて作成された実機図面データから製造されており、基本構造及び各パーツの寸法・形状が概ね一致することから、実質的同一性を認め「使用」に該当するとした。プロジェクト終了後の使用は目的逸脱であり「不正の利益を得る目的」も肯定した。損害額は、正常価格販売分について不競法5条2項(被告の限界利益)で約274万円、廉価販売分及び無償提供分について同条3項(使用料相当額・料率6%)で約240万円を算定し、弁護士費用55万円を加えた合計610万1962円を認容した。差止め及び廃棄請求も認容された。