AI概要
【事案の概要】 北九州市内でラウンジを経営していた原告が、指定暴力団五代目工藤會傘下の田中組構成員から刃物で顔面を切りつけられる等の襲撃を受けて負傷したとして、工藤會総裁である被告C及び会長である被告Dに対しては使用者責任(民法715条)又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)31条の2に基づき、田中組組長である被告Hに対しては共同不法行為(民法719条)又は使用者責任に基づき、約7973万円の損害賠償を求めた事案である。暴対法31条の2は、指定暴力団員が当該暴力団の威力を利用して行う資金獲得行為(威力利用資金獲得行為)により他人に損害を加えた場合に、直接の加害者に資力がなくても被害者が救済されるよう、暴力団の代表者等に損害賠償責任を負わせる制度であり、平成16年改正で導入された。本件では、福岡県暴力団排除条例に基づく暴力団立入禁止標章の掲示を契機として襲撃が行われたという背景事情があった。 【争点】 主な争点は、(1)被告らの不法行為責任又は暴対法31条の2に基づく責任の成否(襲撃が田中組ひいては工藤會の活動として組織的に行われたものか、それとも組員個人の嫌がらせにすぎないか)、(2)工藤會総裁である被告Cが暴対法上の「代表者等」に該当するか(被告C側は代替わり後は隠居的立場であり権能を有しないと主張)、(3)損害額(基礎収入の算定方法、外貌醜状の労働能力喪失率への影響等)であった。 【判旨】 裁判所は、まず実行犯Aの犯人性について、犯行供用車両の調達経緯、襲撃直後にAがボストンバッグを証拠隠滅役に渡した事実、A自身が別の襲撃事件の際に本件への関与を示唆する発言をした事実等から認定した。次に、襲撃は田中組の複数幹部が指揮命令系統に従い役割分担して遂行したものであり、組長である被告Hの指示に基づく田中組の活動と認めた。被告Cについては、対外的序列、幹部組員による日常的な挨拶の慣行、絶縁処分への関与、工藤會本部不動産の管理等の事実から、隠居的立場ではなく実質的最上位者(首領)であるとして「代表者等」該当性を肯定した。損害額については、傷害慰謝料1000万円、後遺障害逸失利益約3645万円(外貌醜状が接客業に与える影響を重視し労働能力喪失率67%を認定)等を認め、犯罪被害者等給付金を控除した上で、被告らに連帯して約6155万円の支払を命じた。