AI概要
【事案の概要】 本件は、原告が商標権者である「BOAST」の文字からなる登録商標(商標登録第5674320号)について、被告(ボースト ブランズ グループ,エルエルシー)が商標法50条1項に基づく不使用取消審判を請求したところ、特許庁が、原告は要証期間内に本件商標を使用した事実を証明できず、また本件審判請求が信義則違反・権利濫用にも当たらないとして商標登録を取り消す審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消請求事件である。原告は米国で「BOAST」ブランドに係る高級スポーツ衣類事業を営んでいたが、平成22年に米国内事業をブランデッドボースト社に売却し、米国外の商標権は留保した。その後、原告とブランデッドボースト社は平成27年に和解契約を締結し、同社は原告の商標権を妨害しない義務(不争義務)を負った。被告は平成29年にブランデッドボースト社から米国内事業を買収してその契約上の地位を承継した後、原告の商標買取交渉が不調に終わると、本件不使用取消審判を請求した。 【争点】 本件審決における信義則違反又は権利濫用の判断の誤りの有無が争点である。すなわち、和解契約に基づく不争義務を承継した被告が不使用取消審判を請求することが信義則に反するか否かが問題となった。 【判旨】 知財高裁は、本件審決を取り消した。まず、和解契約の条項(12項・14項)の文言及び締結経緯から、ブランデッドボースト社は原告の米国外商標権について不争義務を負っていたと認定した。そして、被告はブランデッドボースト社の契約上の地位を承継したのであるから、同様に本件商標について不争義務を負うとした。その上で、商標法50条1項が「何人も」取消審判を請求できるとしているのは公益的観点によるものであるが、和解契約で不争義務を負う当事者間の合意の効力を尊重しても第三者の審判請求は妨げられないから上記公益を損なわないとし、不争義務を負う者による取消審判請求は信義則に反し許されないと判断した。被告は欠席のため反論がなかった。