AI概要
【事案の概要】 令和3年10月31日施行の第49回衆議院議員総選挙(小選挙区選出議員選挙)について、東京都第5区・第8区・第9区・第18区及び神奈川県第15区の選挙人である原告らが、小選挙区選挙の定数配分及び選挙区割りに関する公職選挙法の規定は投票価値の平等に反し憲法に違反する無効なものであるとして、上記各選挙区における選挙の無効を求めた事案である。本件選挙当時、令和2年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口最大較差は1対2.096(鳥取県第2区と東京都第22区)であり、較差2倍以上の選挙区が23存在した。また、選挙当日の選挙人数を基準とする最大較差は1対2.079で、29選挙区で較差が2倍以上となっていた。 【争点】 本件小選挙区選挙は、憲法に違反した公職選挙法の規定に基づくものとして無効となるか。具体的には、(1)基準人数論に基づく人口比例配分違反、(2)国会による立法不作為、(3)都道府県間の逆転現象の放置、(4)本件選挙区割り自体の投票価値の平等違反の各点が争われた。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、投票価値の平等は憲法上の要請であるが、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮し得る他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきものであるとの判断枠組みを示した。その上で、平成28年改正法がアダムズ方式を導入し、令和2年国勢調査の結果に基づく定数配分の見直しにより選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させ、その状態を安定的に持続させる立法措置を講じたことを評価した。本件選挙で最大較差が2倍を超えたのは、都市部への人口流入が改正法の想定を超える規模・速度で進行したことによるものであり、1人別枠方式のような選挙制度自体に起因する構造的問題によるものではないとした。さらに、令和4年6月25日までにアダムズ方式に基づく選挙区割りの改定案の勧告が予定されており、具体的な改定時期・基準・手続が法定されていることも考慮し、較差が2倍を僅かに超えた程度にとどまることも併せれば、本件区割規定は憲法に違反する状態に至っていたとまでは認められないと判断した。もっとも、投票価値の較差が2倍以上となった選挙区が存在したことについて「憲法の要求する投票価値の平等の趣旨に沿わない状態にあったとの評価も十分考えられる」とも付言している。