AI概要
【事案の概要】 スポーツブランド「PUMA」を展開する原告(プーマ)が、被告(沖縄の土産品業者)の商標「SHI-SA」(シーサーの文字と、右から左へ跳び上がる四足動物のシルエット図形を組み合わせた結合商標。指定商品は第25類「Tシャツ、帽子」)について、原告の周知著名な引用商標(プーマのロゴマーク)との関係で商標法4条1項15号(混同のおそれ)及び同項7号(公序良俗違反)に該当するとして商標登録無効審判を請求した。特許庁は、15号を理由とする請求を却下し(除斥期間経過後の請求であり「不正の目的」が認められないため)、7号該当性も否定して請求不成立の審決をした。原告がこの審決の取消しを求めて知財高裁に提訴した事案である。なお、本件商標権は審判係属中に放棄により抹消されている。また、本件商標の動物図形部分のみからなる別の被告標章については、先行する別件訴訟で引用商標との混同のおそれが認められ、商標登録が無効とされ確定していた。 【争点】 1. 本件商標が「不正の目的で商標登録を受けた場合」(商標法47条1項括弧書き)に該当するか(取消事由1)。具体的には、(a)本件商標の動物図形部分を分離して引用商標と対比すべきか、(b)本件商標と引用商標の類似性、(c)被告に不正の目的があったか。 2. 本件商標が商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するか(取消事由2)。 【判旨】 知財高裁(第1部・大鷹一郎裁判長)は、原告の請求を棄却した。 取消事由1について、裁判所は以下のとおり判断した。まず、本件商標の動物図形と引用商標は、四足動物が跳び上がるシルエットという基本的構成で共通し似通った印象を与えものの、本件商標には中央部に大きく「SHI-SA」の文字が配置されており、動物図形はその文字部分の近接位置に「SA」を囲むように配されていること、文字部分全体の面積が動物図形より大きいこと、「SHI-SA」の文字から「シーサー」の称呼・観念が生じ、動物図形もシーサーの特徴(たてがみ、首飾り、巻き毛模様、太い尻尾等)と一致することから、需要者は動物図形を沖縄の伝統的獅子像「シーサー」を図形化したものと看取するとした。したがって、動物図形と文字部分を分離して観察することは取引上不自然であり、動物図形のみを抽出して引用商標と対比することは相当でないとした。本件商標全体と引用商標を対比すると、外観・称呼・観念のいずれにおいても異なり、類似しないと判断した。不正の目的についても、審判手続における被告の上申書は具体的事実の自白とは評価できず、また被告作成書面のデザイン経緯の記載も「プーマ等を参考にシーサーを表現する意図」を示すにとどまり、顧客吸引力へのただ乗り目的を裏付けるものとは評価できないとして、不正の目的を否定した。 取消事由2についても、本件商標と引用商標は類似せず不正の目的も認められない以上、商標法4条1項7号に該当するとの主張はその前提を欠くとして排斥した。