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【事案の概要】 宮古島市長であった被告人が、同市への陸上自衛隊配備計画をめぐり、市議会での一般質問に対する答弁として配備計画の受入れを表明したところ、これにより自社所有地が駐屯地用地として国に売却され約18億円を得た株式会社Aの代表取締役Bから、謝礼の趣旨で現金600万円の供与を受けたとして、単純収賄罪に問われた事案である。防衛省は宮古島市内のDの土地とAの土地(本件土地)を駐屯地用地の有力候補としていたが、Dへの建設に反対の声が強まる中、被告人が配備受入れとD周辺での建設不可を表明したことで、本件土地に駐屯地主要施設を配置する計画に変更された。多額の債務を抱え経営困難に陥っていたBは、被告人に対し事前に「自衛隊の誘致が認められなければ破産して死ぬかもしれない」「お礼をする」と陳情していた。本件土地の売却代金が支払われた後、Bは被告人と東京で面会し、「ありがとうございました」と述べながら現金600万円入りの紙袋を渡した。 【争点】 弁護人は、①本件表明は市長の職務権限に属さない(職務性の欠如)、②本件金員は本件表明の対価ではない(対価性の欠如)、③被告人には賄賂性の認識がなく故意を欠く、として無罪を主張した。職務性については、陸上自衛隊配備の最終決定権限は防衛省にあり、被告人が個人の考えを述べたに過ぎないと主張した。対価性については、本件土地売却代金約18億円に比して600万円は少額であること、本件表明から供与まで約2年が経過していること、Bからの請託がないこと等を指摘した。賄賂性の認識については、被告人は政治献金として受領したと供述した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、全争点について弁護人の主張を排斥し、有罪と認定した。職務性については、地方自治法の規定に照らし、陸上自衛隊配備のように地域住民の生活やあり方に多大な影響を与える重要政策課題について市長が議会で見解を示すことは、市長にしかなし得ない本分ともいい得る行動であり、「地域における事務」の執行として市長の職務権限に属すると判断した。防衛省設置法等が地方公共団体との調整を予定していることも、この解釈と整合するとした。対価性については、本件表明が本件土地売却の可否に影響する関係があったこと、Bにとって土地売却は死活問題であり一般的な政治献金の利益を遥かに超える具体的利益を得たこと、供与額が従前の選挙資金等に比してかなり高額であること、わざわざ東京で人目をはばかる態様で供与したこと等から、本件金員は本件表明に対する謝礼の趣旨を含むと認定した。仮に政治献金の趣旨が併存しても対価性は損なわれないとした。賄賂性の認識についても、被告人は事実経過の根幹を認識しており、政治献金名目でも収賄罪は成立し得るとして故意を認めた。量刑については、市政を左右する重要な政治課題に関連して賄賂を収受した点で市政の公正さへの信頼を大きく裏切るものとしつつ、被告人が金員供与を期待していたとはうかがわれず、主体的・能動的に賄賂を受け取る行動をしたともうかがわれないことから、懲役3年・執行猶予5年・追徴600万円とした(求刑どおり)。