AI概要
【事案の概要】 太陽光発電事業等を営む株式会社Aの専務執行役員であった被告人が、同社代表取締役であるBの指示を受け、B及び専務取締役Dと共謀の上、被害銀行であるC銀行から融資金をだまし取った詐欺の事案である。 株式会社Aは、以前から複数の協力会社との間で取引実体のない資金移動を繰り返し、内容虚偽の見積書等を用いて粉飾決算を行い、被害銀行に対して財務経営状況が良好であるかのように見せかけていた。しかし実際には、令和元年11月期末時点で少なくとも21億円超の債務超過に陥っており、本件犯行前頃にはいわゆる自転車操業状態にあった。 このような状況の下、被告人らは、株式会社Aの子会社である合同会社A発電所X号が太陽光発電設備の開発設計等を実施するための融資を受ける名目で、具体的な工事計画が存在しないにもかかわらず、施工業者等に既に発注して支払予定であると見せかけた内容虚偽の見積書等を作成し、C銀行に対して虚偽の説明を繰り返した。その上で、融資金の振込先となる複数の会社に対し、融資金を株式会社Aやその関連会社に移動させるよう依頼し、融資金を同社の別の債権者への返済に直ちに充てる段取りを周到に組むなどして、令和2年7月17日、C銀行から約7億5839万円の融資金をだまし取った。 【判旨(量刑)】 被告人を懲役3年(執行猶予5年)に処した(求刑:懲役4年)。 裁判所は、本件被害額が7億5000万円余りと巨額であり、株式会社Aが令和3年2月に事実上倒産し、融資金が一切返済されておらず今後返済される具体的見込みもないことから、被害結果は重大であるとした。また、会社ぐるみで虚偽に虚偽を重ねて組織的に行われた計画的犯行であり、非常に悪質であると指摘した。 被告人の役割についても、内容虚偽の見積書等を部下に作成させ、被害銀行との交渉の場で共犯者と共に虚偽の説明をする実行行為を担うなど重要な役割を果たしたとし、深く考えようとせず共犯者の指示に従った点は強い非難に値するとした。 他方、被告人は粉飾決算等が行われる以前から一従業員として同社に勤務しており、専務執行役員の役職にあったものの経営に関する権限や裁量は一切なく、ワンマン経営者であった共犯者の意向に逆らえる立場になかったこと、特段の利益や報酬を受領しておらず受動的・従属的に加担したにすぎないことを相応に酌むべき事情として認めた。加えて、事実を率直に認めて事案解明に協力していること、被害弁償に努めたいと述べて反省していること、前科がないこと、妻が監督を誓っていることなどを考慮し、刑の執行を猶予して社会内での更生を期するのが相当と判断した。