大麻取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、令和2年2月頃から令和3年6月3日までの間、自宅において大麻草153本を栽培し(大麻取締法24条1項)、同日、同所において大麻である植物片約365gおよび粘稠物約0.58gを所持した(同法24条の2第1項)。被告人には約20年前に大麻の栽培・所持による同種前科があった。原審(広島地裁)は、栽培規模がこの種の事案として大量であること、犯行動機にさして酌むべき事情がないこと等を考慮しつつ、前科が約20年前であることや犯行を認めていること等も踏まえ、懲役3年(執行猶予4年)を言い渡した。なお、原審では大麻取締法の合憲性は争点とされておらず、弁護人は執行猶予付判決を求めていた。これに対し被告人側が控訴した。 【争点】 控訴審で弁護人が主張した争点は以下の3点である。①大麻取締法の法令違憲(大麻の使用は幸福追求権・信教の自由として保障されるべきであり、大麻の有害性はたばこやアルコールに比して高くなく、罰金刑を設けず懲役刑のみを定める罰則は必要最小限の規制を超え違憲無効である)、②適用違憲(諸外国の大麻合法化の動向、麻薬に関する単一条約の規制スケジュール変更、CBD製品の流通状況等に照らし、大麻所持等に対する規範意識の形成が困難な状況にあるのに従来どおりの量刑判断をした原判決は憲法違反である)、③量刑不当(懲役3年・執行猶予4年の刑が重すぎる)。 【判旨(量刑)】 広島高裁は、控訴をすべて棄却した。法令違憲の主張については、国内外の専門家の研究結果や厚労省の検討会とりまとめ等を踏まえても、大麻に精神依存性があり長期間の濫用により記憶・認知の障害や精神障害を発症する危険性があるとされており、大麻の有害性という立法事実は失われていないと判断した。また、諸外国と比較しても法定刑が罪刑の均衡を失するほどに重いとはいえず、近年大麻事犯の検挙人員が増加傾向にあることからも、規制が必要最小限を超えているとの主張は採用できないとした。適用違憲の主張についても、嗜好用大麻の合法化国はごく少数にとどまること、条約上の規制変更は医療用大麻の活用を踏まえたものにすぎないこと、国内で適法に流通するのは大麻取締法上「大麻」に該当しない製品に限られることを指摘し、前提を欠くとして退けた。量刑不当の主張についても、栽培規模・所持量、同種前科の存在、違法性を十分認識した上での犯行であること等に照らし、原判決の量刑は近時の裁判例の傾向に照らしても相当であり、重すぎて不当とはいえないと結論づけた。