特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「ソレノイド」とする特許(本件特許)の共有者である控訴人(イーグル工業株式会社)が、被控訴人(株式会社テージーケー)の製造販売する可変容量コンプレッサ容量制御弁(被告製品)が本件特許の技術的範囲に属し、その製造販売が特許権侵害に当たると主張して、損害賠償を求めた事案の控訴審である。本件発明は、ハウジングの取付孔に収容されるソレノイドにおいて、取付孔に密封嵌合して開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材と、取付孔と端部部材との間に配置されるシール部材を備えることで、外部雰囲気の進入を抑制し耐食性を向上させる構成に特徴がある。原審は、被告製品は本件発明の技術的範囲に属さないとして控訴人の請求を棄却した。控訴人は控訴審において差止請求を取り下げ、約19億9644万円の損害賠償請求に変更した。 【争点】 1. 被告製品の構成要件充足性(構成要件B6「密封嵌合」及び構成要件Cの充足性) 2. 均等論の成否 3. 控訴人の損害額(特許法102条1項・2項・3項) 【判旨】 知財高裁は、原判決を変更し、8920万円の損害賠償を認容した。 構成要件B6の「密封嵌合」について、裁判所は、「密封」とは外部雰囲気の進入を完全に遮断することではなく「抑制」する程度のものを指すと解釈した。本件発明は、端部部材(構成要件B6)とシール部材(構成要件B7)の2つの構成によって外部雰囲気の進入を抑制するものであり、端部部材のみで外部雰囲気の進入を完全に抑制する必要があるとする被控訴人の解釈は誤りであるとした。各種実験結果を検討し、被告製品の端部部材は少量の水滴や短時間の湿気の流入を抑制する効果を有していると認め、構成要件B6を充足すると判断した。構成要件Cについても充足を認め、被告製品は本件発明の技術的範囲に属するとした。 損害額の算定については、特許法102条1項に基づき、原告製品2(本件発明の実施品ではないが市場で競合する製品)を基準とした。原告製品2はシール部材を備えておらず、メッキ処理で耐食性を確保していたことや、制御弁としての機能・動作性に強い顧客吸引力があることから、限界利益の95%の覆滅を認めた。販売不能事情として2割を控除し、さらにその一部について実施料相当額を加算した。弁護士費用等を加え、損害額を合計8920万円と認定した。