意匠権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(原告)は、意匠に係る物品を「排水口用ゴミ受け」とする意匠権(意匠登録第1651754号)を有する会社である。控訴人は、被控訴人(被告)が製造・販売する排水口用ゴミ受け製品(被告製品)が原告意匠権を侵害すると主張して、意匠法37条1項及び2項に基づく被告製品の製造・販売・輸入及び販売の申出の差止め並びに廃棄を求めるとともに、民法709条に基づく損害賠償金2200万円及び遅延損害金の支払を求めた。原審(東京地方裁判所)は控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主たる争点は、被告製品を開発・製造したダイセン社に先使用権(意匠法29条)が成立するか否かである。控訴人は当審において、ダイセン社が中国のWuxi社から被告製品の意匠の開示を受けた平成31年4月の時点で、控訴人が中国の協力会社との間で打合せに使用していた意匠(本件出願前意匠)の存在について悪意であったと主張した。その根拠として、きわめて近接した時期に同じ中国で類似する意匠が開発されたことは偶然では考え難く、少なくともWuxi社は本件出願前意匠について悪意であったと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、控訴を棄却した。当審における控訴人の新たな主張について、裁判所は以下のとおり判断した。ダイセン社の当時の営業部長の陳述書によれば、ダイセン社及びWuxi社は被告製品の開発に当たって本件出願前意匠に接する機会はなく、既に市販されていた洗面台用ごみ受けの構成を参考としつつ、打合せの最中につまみ部分を付加するアイデアが出たことから、取り外しの便宜のためにつまみ部を設けることにしたと認定した。このような開発経緯は、排水口のごみ受け分野において円状のフィルタの周囲につまみ部を設ける構成が珍しくなかったことに照らしても不自然ではないとした。他方、Wuxi社が本件出願前意匠に接し得たことをうかがわせる事情(Wuxi社と控訴人の中国協力会社との人的つながりや地理的近接性等)は証拠上全くうかがわれず、控訴人の主張はほぼ同じ時期に同じ中国で開発が行われたというだけの事実に基づくものであり、到底採用できないとした。以上から、本件出願前意匠と原告意匠との同一性や類似性を問うまでもなく、ダイセン社らは原告意匠を知らないで被告製品の意匠を創作したと認められ、先使用権の成立要件は充足されているとして、原判決は相当であると結論づけた。