発信者情報開示請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 原告(経済評論家)は、自身が主催する会員制オンラインサロンの会員向けに電子メールで配信した記事(原告記事)について、氏名不詳者がツイッター上で原告記事を加工した画像を含むツイートを無断で投稿したと主張した。原告は、当該投稿が原告記事に係る著作権(公衆送信権)を侵害するものであることが明らかであるとして、経由プロバイダであるKDDI株式会社(被告)に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報(氏名・住所等)の開示を求めた。原告は、ツイッター社から本件アカウントへのログイン時のIPアドレスの開示を受け、当該通信が被告を経由プロバイダとするものであることを特定していた。 【争点】 ①本件発信者情報の「権利の侵害に係る発信者情報」該当性(ログイン時のIPアドレスから把握される情報が、投稿者の情報といえるか)、②被告の開示関係役務提供者該当性、③権利侵害の明白性(原告が著作権者か、適法な引用に当たるか)、④発信者情報の開示を受けるべき正当理由の有無。被告は、ログイン日時が投稿日時の約18時間後であること、アカウントの複数人共有の可能性、原告記事末尾の著作権表示が法人名であること、本件投稿が適法な引用に当たること等を主張して争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を全部認容した。争点①について、ツイッターの仕組み上、法人・団体が営業等に利用する場合を除き、複数人がアカウントを共有する可能性は極めて乏しく、本件でもそのような事情は見当たらないとして、ログインした者と投稿者は同一人物であると認定した。投稿とログインの時間的間隔についても、アカウントが第三者に譲渡されたなどの特段の事情がない限り、前後関係や間隔の程度を考慮するまでもなく同一性を認めるべきであるとし、特段の事情は認められないと判断した。争点②について、ログインを媒介した被告は開示関係役務提供者に該当するとした。争点③について、原告記事の末尾に法人名の著作権表示があるとの被告の主張に対し、原告が会員向け配信メールとして自ら作成した著作者であると認定した。また、被告が主張した適法引用(著作権法32条1項)についても、投稿目的が明らかでなく、引用目的に照らして利用が公正慣行に合致した合理的に必要なものであったことを示す証拠もないとして、引用の要件を満たさないと判断した。争点④について、原告が損害賠償請求権を行使するために開示を求めたものと認め、正当理由を肯定した。