(事件名なし)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 亡Dの相続人である被控訴人らが、控訴人会社に雇用されて控訴人市の設置する体育館の設備管理業務等に従事していたDが、同体育館の石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露し、じん肺(石綿肺)及び肺がんにり患して死亡したと主張し、控訴人市に対しては国家賠償法1条1項又は2条1項に基づき、控訴人会社に対しては安全配慮義務違反又は不法行為に基づき、損害賠償金合計3465万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案の控訴審である。原審は、Dが体育館において石綿粉じんばく露の危険性を有する作業に従事し、石綿肺にり患して肺がんを発症し死亡したとして、控訴人市に国賠法2条1項の、控訴人会社に安全配慮義務違反の各責任を認め、合計2580万円の限度で請求を認容した。控訴人らがこれを不服として控訴した。 【争点】 1. Dが高濃度の石綿粉じんにばく露し石綿肺にり患したか(控訴人らは、Dの石綿小体数が一般大気環境レベルにとどまること、胸膜肥厚が石綿ばく露による胸膜プラークではなく結核性胸膜炎等に起因する可能性があることを主張) 2. 石綿粉じんばく露とDの死亡との間の因果関係(控訴人らは、Dの死因はARDS及び細菌性肺炎であり、石綿ばく露との因果関係がないと主張) 3. 損害額(控訴人会社は、ARDS及び細菌性肺炎の寄与度に応じた減額を主張) 【判旨】 控訴棄却。福岡高裁は原判決を相当とし、以下の補正を加えた上で引用した。胸膜肥厚について、好発部位(傍脊椎領域・下肺背部)に存在し結核性胸膜炎と異なり石灰化していないこと、病理解剖で組織学的に胸膜プラークの所見と一致することが確認されていることから、石綿ばく露によってのみ発生する胸膜プラークであると推認するのが相当とした。九州労災病院が本件胸膜肥厚の原因は断定できないと回答した点については、組織学的に胸膜プラークの所見と一致することまで否定するものではないとして退けた。因果関係について、Dが誤嚥性肺炎を発症したことを認めるに足りる証拠はなく、仮に誤嚥を繰り返していたとしても肺機能低下に伴う全身状態悪化によるもので、その肺機能低下は石綿肺り患及び肺がんによる左肺下葉切除手術に起因するとして、石綿粉じんばく露と死亡との因果関係を肯定した。寄与度減額の主張についても、石綿肺・肺がんのり患と細菌性肺炎・ARDSの発症との間に因果関係がある以上、前提を欠くとして採用しなかった。