AI概要
【事案の概要】 本件は、三菱電機株式会社(被告)の元従業員である原告が、在職中に行った送風機やファン等に関する複数の職務発明及び職務創作意匠について、特許法35条3項等に基づく相当の対価の支払いを求めた事案である。原告は平成9年から平成29年まで被告に勤務し、静岡県所在の住環境開発センター等に在籍していた。対象となる発明等は、(1)プロペラファンの後縁部に凹部を設けた送風機に関する発明(本件発明1)、(2)プロペラファンに係る意匠3件(本件各意匠1)、(3)クロスフローファンを有する空気調和機に関する発明(本件各発明2)、(4)シロッコファンに関する発明(本件各発明3)であり、原告は主位的請求として国内・国外実施分の相当の対価合計1億1100万円等の支払いを、予備的請求として不法行為に基づく損害賠償800万円等の支払いをそれぞれ求めた。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明1の実施の有無及び相当の対価の額、(2)本件発明1に関する不法行為の成否、(3)本件各意匠1に係る独占の利益の有無、(4)本件各発明2の国内・国外実施分に係る相当の対価の額、(5)本件各発明3に関する被告規程に基づく対価支払いの不合理性の有無、(6)各請求権の消滅時効の成否である。 【判旨】 裁判所は、請求の大部分を棄却し、本件発明2-1(クロスフローファン)の国内・国外実施分についてのみ合計197万3393円の支払いを命じた。 本件発明1については、対象製品群が構成要件1Eを充足しないことは当事者間に争いがなく、出願経過に照らすと構成要件1Eは特許査定に至る上で重要な技術的意義を持つものであるから、実質的な作用効果の程度に着目して実施を認めることは数値限定の記載の意味を失わせるとして、被告による実施を否定した。不法行為に基づく請求についても、被告には従業員の職務発明を実施する義務はなく、信義則違反は認められないとした。 本件各意匠1については、ファンは室外機内部に搭載されて販売されるものであり、需要者の視覚を通じて美感を想起させる態様で実施されているとはいえないとして、独占の利益を否定した。 本件各発明2については、発明2-1が被告の2005シーズン年度モデルで実施されていると認め、超過売上割合50%、仮想実施料率3.5%、対象特許発明の貢献割合1%、被告の貢献割合95%、共同発明者間の原告の貢献割合60%として相当の対価を算定した。消滅時効については、被告規程における実績補償金の支払時期等を踏まえ、時効の起算点は平成30年4月28日であり、訴え提起により中断しているとして、被告の時効援用を排斥した。 本件各発明3については、被告規程に基づく対価支払いの不合理性を検討し、使用者等と従業員等との協議の状況、基準の開示状況及び意見聴取の状況のいずれにおいても不合理な点は認められないとして、平成16年法35条5項の適用を否定し、原告の請求を全て棄却した。