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【事案の概要】 令和元年7月15日、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が札幌市内で参議院選挙の応援演説を行った際、原告1(男性)が「安倍辞めろ」等と、原告2(女性)が「増税反対」等と声を上げたところ、北海道警察の警察官らに肩や腕をつかまれて演説現場から強制的に移動させられた。さらに原告2は、演説会場を離れた後も警察官らに長時間にわたり付きまとわれた。原告らは、警察官らの行為が違法な公権力の行使であるとして、被告(北海道)に対し、国家賠償法1条1項に基づきそれぞれ330万円の損害賠償を求めた。 【争点】 (1) 原告1に対する各排除行為(計3回)の適法性(警職法4条1項・5条の要件充足性) (2) 原告2に対する排除行為・制止行為・追従行為(計3回)の適法性(警職法4条1項・5条、警察法2条の要件充足性) (3) 損害の有無及びその額 【判旨】 裁判所は、原告1に対する行為のうち、演説車両に向かって走り出した際の制止行為(本件行為1(2))のみ警職法5条の要件を充足し適法とした一方、それ以外の全ての行為を違法と判断した。主な理由は以下のとおりである。まず、警察官らの証言について、現場で撮影された動画と整合しない点が多く、聴衆から怒号が上がっていたとの証言は動画に録音されておらず、原告らが興奮状態にあったとの証言も動画からは裏付けられないとして、いずれも採用できないとした。次に、警察官ら自身が排除後に「演説してるから、それ邪魔しちゃだめだよ」「聞きたい人にとって、大声出されたら聞きたいこと聞けなくなっちゃうっしょ」等と発言していたことから、犯罪の危険を認めて行動したのではなく、単に演説の妨げになることを理由に排除したものと認定した。原告2への追従行為については、合計約2.2km・40〜60分に及び、何度も前に立ちふさがり、「ジュース買ってあげる」「今日はもう諦めて」等と述べて次の演説会場への移動を阻止しようとしたものであり、必要かつ相当な手段を超えていたと判断した。その上で、原告らの行為は公共的・政治的事項に関する表現行為であり、憲法21条1項により特に重要な権利として尊重されるべきところ、警察官らはこの表現行為そのものを制限したものと認定し、原告2についてはさらに移動・行動の自由、名誉権及びプライバシー権の侵害も認めた。慰謝料等として原告1に33万円、原告2に55万円の支払を命じた(請求額各330万円)。