(事件名なし)
判決データ
AI概要
【事案の概要】 国営諫早湾土地改良事業(諫早湾干拓事業)を行う控訴人(国)が、潮受堤防の排水門開放を命じた佐賀地裁判決及び福岡高裁判決(本件各確定判決、平成22年12月確定)に基づく被控訴人ら(漁業者48名)の強制執行の不許を求めた請求異議訴訟の差戻控訴審である。本件各確定判決は、漁業行使権に基づく妨害排除請求権として、「判決確定の日から3年を経過する日までに排水門を開放し、以後5年間にわたり開放を継続せよ」との特殊な主文を採用していた。差戻前控訴審は共同漁業権の存続期間満了を理由に請求を認容したが、最高裁は、確定判決の暫定的性格や口頭弁論終結後の事情変動を踏まえた権利濫用の成否等について更に審理を尽くすべきとして破棄差戻しをした。控訴人は、漁獲量の増加傾向、対策工事の実施不能、違法性の衡量の逆転等を異議事由として主張した。 【争点】 (1) 口頭弁論終結後の事実関係の変動の有無及び請求異議事由該当性(争点1) (2) 被控訴人らの強制執行が権利濫用又は信義則違反に当たるか(争点2) (3) 漁業協同組合の組合員たる地位の消滅(争点3) 【判旨】 原判決中被控訴人らに関する部分を取り消し、控訴人の請求を認容(強制執行を許さない)。裁判所は争点2(権利濫用)について次のとおり判断した。本件各確定判決は、暫定的・仮定的な利益衡量を前提に期間を限った判断をしたものであり、前訴口頭弁論終結後の事情変動を踏まえ改めて利益衡量を行うべきとした。漁業被害について、共同漁業権対象魚種の漁獲量及び組合員一人当たりの漁獲量は確定判決後に増加傾向にあり、侵害の程度は軽減方向にある。また、平成29年評価委員会報告等を踏まえると、漁獲量減少の全て又は大半が潮受堤防の閉切りによるものかは疑義がある。他方、近時の短時間強雨の増加や海面水位の上昇、河川改修工事の進展等により、排水門を常時開放した場合の防災上の支障は相当に増大し、適時・適切な閉門操作も従前より困難な状況にある。営農面でも、干拓地では先端的農業経営が発展し、排水門開放により営農不能となる可能性がある。さらに、対策工事は地元自治体や住民の強硬な反対により実施の目途が立たず、新たな生態系・自然環境への影響も考慮すべきである。これらを総合すると、被控訴人らの漁業行使権への影響は軽減方向である一方、閉切りの公共性は増大方向にあり、現時点では排水門の常時開放請求を認めるに足りる違法性があるとはいえず、被控訴人らの強制執行は権利濫用に当たり許されないとした。なお、裁判所は付言として、有明海及びそれを取り巻く地域の再生・発展に向けた双方当事者による協議の継続と加速を強く求めた。