AI概要
【事案の概要】 原告(韓国法人)は、移動通信端末機のスリープ状態(非活性状態)から活性化ボタンの操作によりロック画面を表示した活性状態に切り替える際、第1の操作(短押し)と第2の操作(長押し)に応じてそれぞれ異なる動作(カメラ起動、指紋認証、顔認証等)を追加操作なしに実行する移動通信端末装置に関する特許(特許第6386646号)を有していた。被告(Apple Japan合同会社)がこの特許の請求項1ないし4、7及び8について無効審判を請求し、特許庁は、本件各発明はiOS4.2又は4.3を搭載したiPhone4で公然実施された発明及び特表2010-541046号公報(甲3文献)記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたとして、進歩性欠如を理由に特許を無効とする審決をした。原告がこの審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に提訴したのが本件である。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明1と公然実施発明(iPhone4)との相違点1の認定の当否、(2)公然実施発明に甲3発明1(ホームボタン背後の指紋センサによるシームレス認証)を適用する動機付けの有無、(3)公然実施発明に甲3発明1を適用した場合に本件発明1の構成(活性化ボタン操作で追加操作なく使用者識別機能を実行しつつロック画面を表示する構成)に容易に想到するか、(4)顔認証に係る本件発明6についても同様に容易想到か、である。原告は、公然実施発明ではロック画面上のスライダドラッグ後にパスコード入力で認証を行う構成であり、このスライダ操作には誤操作防止の技術的意義があるから、これを排除して追加操作なしの認証構成に改変する動機付けはなく、仮に甲3発明1を組み合わせてもロック画面を残しつつスライダを排除する構成には想到しないと主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。まず相違点1の認定については、本件審決の認定に誤りはないとした。容易想到性の判断については、甲3文献の「起動する(wakes)」はスリープ状態から操作可能な状態にすることを意味し、ホームボタン押下時に追加操作なく指紋認証を行う構成が開示されていると認定した。動機付けについては、公然実施発明と甲3発明1は技術分野・作用機能を共通にし、パスコード認証の課題(漏洩・忘失リスク)という共通の技術課題が存在するから適用の動機付けがあるとした。原告が主張するスライダ操作による誤操作防止の技術的意義についても、指紋認証を採用すれば認証に係る誤操作は防止でき、またロック画面からホーム画面への移行方法は本件発明1で何ら規定されていないから、スライダを取り除く改変が必須ではないと判示した。さらに、公然実施発明に甲3発明1を適用すれば、ホームボタン押下でディスプレイがオンになると同時に指紋認証が行われ、認証成功後にホーム画面に移行する構成が得られ、その間に表示される画面は客観的に「ロック画面」といえるから、本件発明1の構成に容易に想到できると結論づけた。本件発明2ないし5及び本件発明6(顔認証)についても同様に容易想到性を認め、全ての取消事由について理由がないとして審決を維持した。